2.(人事担当者向け)偽人材紹介会社

企業が人を採用するときに、人材紹介会社を使うことが多くあります。人材紹介会社を企業が使うメリットは、「採用に至らなければ、一切企業側に金銭負担がないことです。」正式には有料職業紹介事業というのですが、紹介された人を採用したときに、年収の20%~30%を企業から紹介手数料(成功報酬)として、紹介会社に支払う仕組みになっています。(入社した人からは金銭は徴収しません。)

そして早期退職した場合は、大抵3ヶ月で紹介手数料50%返金としているところが多いのです。この制度を悪用した人材ブローカーが、特に大都市圏周辺の企業や医療機関に下のような手口で、詐欺を仕掛けてきます。
 

ある医療機関での実例をあげましょう。

A病院では看護師が慢性的に不足しており、採用担当の事務長は現場から増員を矢のように催促されていました。そこに現れたのが人材紹介会社の営業を名乗るBという人物です。

Bは事務長の相談を聞き、「当社にも多く看護師が登録していますので、10人は紹介できるかと」と言いました。事務長は早速お願いしたいと人材紹介契約を締結し、Bは言ったとおり、10人以上の看護師を紹介してきました。とにかく看護師を採用したかったA病院は、10人すべて採用し、紹介手数料として年収の2割にあたる1000万円をBの会社に支払いました。

やれやれと思っていたところ、2ヶ月後、採用し普通に勤務していた10人全員が一斉に退職することを表明。どういうことだと、Bに連絡しましたが、電話も通じない、名刺に書かれた所在地にいってみると、すでにもぬけの殻でした。

辞めていく看護師を問い詰めても、退職は労働者の自由ですからといわれるばかり。そうです。Bの所属していた会社はなんの許可もうけていない偽人材紹介会社で、紹介された看護師ももちろんグル。辞めた後Bの元に再集結し、分け前を受け取った後で、また別の医療機関をターゲットにする。実は、筆者も人材紹介会社(もちろん許可有)に在籍しているとき、医療機関に営業をかけましたが、埼玉・栃木・群馬・茨城等の病院にほとんどBのようなブローカーが声をかけてきていたそうです。おかげで、「アナタのところは本物?」と言われる始末。非常に仕事がやりにくかった思い出があります。

見分けるポイントはただ一つ、有料職業紹介は許可制なので、各都道府県の労働局の許可がいります。名刺に許可番号が書いてあるか。あるいはホームページに許可番号が記載されているか。実際に人材紹介会社に出向く際は、目立つ場所に厚生労働大臣発行の許可状が掲示されているかをチェックする必要があります。念を入れるなら、各都道府県の労働局に電話して、許可番号と企業名が一致しているかを確認すべきでしょう。

この手のブローカー詐欺は後を絶ちません。詐欺罪で訴えても、看護師はそんなことは知らなかったといってしまえば、それまで。ブローカーもすでに逃亡しているので、見つけるのは非常に困難です。