ツアーを締めくくる、最高のハッピー・エンド!
『魔女と林檎』のエンディングを怜の歌声とシャウトで飾り、スピーディーな電子音がそこへ続きライブの昂揚感をさらに上げてゆく。『ガリロン』、そして『モノドラマ』と続いたこの日の彼らのステージは、中村泰造(Ba)、ササブチヒロシ(Dr)、辺見直義(Manipulator)からなるサポート・メンバーとの5人編成。vistlipのファンの中にもおそらくいたであろう、普段はバンド・セットのみのステージを見慣れている人達の目には、ボーカル・ギター・ベース・ドラムにデスクトップPC等が加わるバロックの編成は新鮮に映ったかもしれない。そして、そのデジタル・ツールも色濃く駆使するスタイルは、バロックの独特な音楽観を象徴する要素としてあらためて強く印象付けられた。
バンドの生演奏に電子音が彩りを加え、ときにダンサブルに、またあるときには煌びやかな音像が広がり……。その、自由さに満ちたバロックの音楽観は、デビューを先に果たしたキャリア的には先輩バンドとしてvistlipのメンバーにも大いに刺激を与えたに違いない。
「すでに会場は、vistlipで最高に暖まってますよね! 最高の日にしようね! 全員でしようね! 暴れようか!」(怜)
バロックの縦横無尽なノリは、さらなる自由さをもって続いてゆく。『ザザ降り雨』はスウィングするリズムで、『メロウホロウ』は圭の荒々しいギター・リフで、重々しいSEから幕をあけた『湿度』は、細やかな電子音を加えての疾走感で……。かと思えば、『あなくろフィルム』では怜が両手に取ったお玉を鍋に軽快なリズムで打ち付ける。そんな遊び心豊かな演出にファンは手拍子で応えて楽しいムードに染まったかと思ったら、雰囲気はまたしても一転! 激しく瞬くフラッシュライトと連打する一音一音がシンクロした『独楽』、ラップを思わせる独特なフロウが印象的な『我伐道』と、グルーヴ感を多様に変化させていく1曲1曲が、SHIBUYA-AXを埋め尽くしたファンの人波を絶えず揺らし続ける。
「最高だね……。いっぱい言うこと考えたけど、真っ白になっちゃったよ(笑)。最高!」(怜)
2マンツアーのエンディングが徐々に近づき、万感の想いがメンバーからは伝わってくる。そして、その想いを乗せた『何千何万何億の君への想い』は、ダイナミックなバンド・サウンドとドラマチックなメロディが融合する。さらに続けた『凛然アイデンティティ』は、圭が片手に握ったタオルを勢いよく振り回し、ファンがそれに続いて両者の一体感がどんどん高まり……。「みんな、ありがとう━━!」(怜)。まばゆい光に包まれながら奏でられた『teeny-tiny star』で、<reversion fruits>のエンディングは最高のハッピー・エンドを迎えた。
「せっかく、vistlipとバロック、一緒にやったということで……。vistlip、出てきてくれますか!」(怜)
自身のライブで<reversion fruits>ファイナルを締めくくったバロックが、vistlipのメンバーをステージ招き入れ、この良き日の記憶をその心に刻み込む。