アーバンギャルド・浜崎容子(Vo)

アーバンギャルドのボーカル、浜崎容子さんがにバンドに加入したのが2007年。そして今年は浜崎さん加入15周年のアニバーサリーイヤーです。

アーバンギャルド加入をきっかけに、地元兵庫県を離れて上京した浜崎さんですが、今年の初めに再び東京を離れ、兵庫県に拠点を移しました。

今は「ゆっくりとした生活で自分を取り戻している」と語る浜崎さんに、これまでとこれからのお話をじっくり伺いました。

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この2年は「失われた2年間」なんです

――浜崎さんは、今年1月から地元である兵庫県にお住まいとのことですが、アーバンギャルドに加入がきっかけで上京してから十数年、今また東京から離れて地元に住む選択を選んだ理由を聞かせてください。

浜崎:やっぱり新型コロナウイルスの影響が大きいですね。日本中でライブイベントの中止や延期が本格化した2020年の春頃、アーバンギャルドは三人体制になってから一番長いワンマンツアーの真っ只中でした。

ツアー自体は1月から始まっていたのですが、周りのアーティストやアイドルのライブも公演中止になって、3月に入るとだんだん雲行きが怪しくなってきて、残り半分を残したまま中止になってしまったんです。そのときに「時代が変わっていく」予感はしていました。

そして、ライブも配信になったり、打ち合わせもリモートに切り替わっていったじゃないですか。時代が変化していく予感は持っていたものの、「とりあえず1年は様子をみよう」と思いつつ過ごしていました。

そして年が明け2021年になったけれど、状況は相変わらずで……。

――いわゆる有観客ライブは、緊急事態宣言の有無や感染者数などで、様子を伺いながら開催されていますね。

アーバンギャルド

浜崎:フルキャパでライブをすることも難しいし、会場でお客様も声を出せない。何をやるにも必ず制限はついてまわりますよね。お客様にも検温や消毒など、入場の際にお手間をかけてしまいます。それに会場へ行くにも公共機関を使う方が多いでしょう、そこでも心労が増えてしまう。

私はライブを「特別なもの」にしたくなかった。ライブは、自分たちが生活していく中で「このライブは大事だから!」とか言いたくなくて。全部大事なんです。

だからこそ日常的にライブがあるという状態で活動していたのに、それがコロナで「今まで通りのライブ」ができなくなってしまったじゃないですか。

――自分たちの力ではどうにもならない要因によって、準備などを含めてライブが「特別なこと」になってしまった。

浜崎:「ライブを特別視しない」いうポリシーでやっていたのに、いろいろな理由で特別視しないといけなくなった。周囲やSNSを見ていても、予定されていたライブが当日突然中止になっていたり、自分たちも「前日までやれるのか?」と体温を測りながら不安を抱えている。

知ってますか? 一週間の検温記録を提出しないとライブができない会場もあるんですよ。

――そうなんですか。万が一熱が出たらと考えたらハラハラしますね。

浜崎:ライブというものが、あまりにも特別になりすぎてしまった。そこに疑問を感じるようになって……。だから、私にとって、「これまで通りのライブができなかった」この2年は「失われた2年間」なんです。バンドにとって2年はとても大きいです。

――気がつけば2年も経ってしまって、周囲でもいろいろな理由で「ライブに行くこと」から距離をとっている人も少なくありません。この先、国が「もう大丈夫です」と宣言しても、「ライブが日常」の生活になかなか戻れない人もいるでしょうし……。

浜崎:バンド側がフルキャパ(会場キャパシティに対する収容率の100%)でやってもお客様は戻ってこないと思うんです。逆に「えっ、フルキャパなの?」みたいに引いてしまう可能性もありますよね。

配信ライブをやるにもその分経費がかかるし、配信ライブだとこちらの思うようにライブの迫力が伝わらなかったり、配信の不手際が起きたりもする。どのバンドも、これまでやらなかったことをプラスアルファでやっていかなくてはならないという負のスパイラル期ですよね。

――コロナ禍の間、いろいろな技術の進歩もあったと思いますけど、マイナス面も大きいですね。

自分自身も、以前は「仕事早く終わったし、楽しそうなイベントあるから当日券で行こう」くらいの感覚で、ライブに足を運んでいたけれど、現在はそういうフットワークの軽さは失われてしまった気がします。

浜崎:「気軽にフラッと当日券で(ライブに)行く」っていうノリ、今はないですよね。

そうそう、アーバンギャルドはなぜか当日券が売れるバンドとイベンターさんの間でよく言われていたんです。それはファンが、体調の問題などで当日にならないとライブに行けるかどうかわからない人が多かったのかもしれない。そういう子たちも今はずっと家にいるのかな……。

――ライブに行くときも、「行く」という覚悟や決断が必要になってくるんですよね。「なんとなく」が失われてしまっている。ライブ以外でもさまざまな行動が制限されると、だんだん気持ちに余裕がなくなっていくんだなと感じる2年でした。

浜崎:本当に、「想像力」って限界あるんだなって。最初「家から出ないで」と言われて、私は「やった〜」って思ったんですね。「不要不急どころか、必要至急でも出ないぞ!」くらいだったのに(笑)。

でも、やっぱり自分の意志で家から出ないのと、「家から出たらダメ」と言われるのは違うんですよ。こんなに引きこもりおうち大好き人間ですら、外から色々なものを吸収して刺激を受けていたんだなと実感しました。

浜崎さんの寝室

気分転換にネイル行こうだとか、フラッと買い物に行こうとか、友達に会うだとか、そういうものが制限された時代になって、そんな日々の小さなことでインスピレーションをもらっていたことに気がついてしまって。曲が書けなくなったんです、本当に書けなくなっちゃって。

曲だけじゃない、制作、創作活動もそう、ライブ活動もそう、アーバンギャルドだったり自分のソロだったりとか、音楽にまつわることすべてに影響が出てしまう。そうなると、モチベーションをこれまでのように保てるのかと自問自答するようになったんです。