2018年でCDデビュー10周年を迎えるアーバンギャルド。それを記念して2年4ヶ月ぶりのオリジナルアルバム『少女フィクション』を4月4日にリリース、そして4月8日には10周年記念公演「アーバンギャルドのディストピア2018 KEKKONSHIKI」を中野サンプラザホールで行います。
今回はメンバー全員をお招きして、アーバンギャルドの10年間を「メンヘラ」「少女」「テクノポップ」「サブカル」という4つのキーワードを通して語っていただきました。
「メンヘラってなあに?」「貴女みたいな人だよ」
――今回は、アーバンギャルドから着想する4つのキーワード「少女」「サブカル」「テクノポップ」「メンヘラ」をテーマに、この10年を振り返っていただきたいと思います。この言葉ってどれも意味を変えたというか、言葉を取り巻く環境が変わったと思うんですよ。
(※おおくぼけい(Key)さんは交通事情でちょっと遅刻とのことです)
浜崎容子(Vo):私アーバンギャルドに入ってから「メンヘラ」という言葉を知ったんですよね。だから松永に「メンヘラってなあに?」って聞いた記憶があります。
――松永さんは何と?
浜崎:「貴女みたいな人だよ」って(笑)。
松永天馬(Vo):そんな風に言ったっけ(笑)、随分ストレートですね。
瀬々信(G):アーバンギャルドを立ち上げた時は「メンヘラ」という言葉はあんまり一般的でもなかったですし。少なくとも僕は知らなかった。こういう音楽をやっていたら、いつの間にかリンクしたというか。
松永:リスナーの子たちから教えてもらったといえばいいのかな、明確に共通点を持った女の子たちが僕らの音楽に集ってきたんです。最初は「この子たちはどこから来たんだろう?」という感覚でしたね。
瀬々:どうやら松永天馬の描く世界観というものに引き寄せられて、そういう子たちが集まってくるんじゃないか、それで「メンヘラ」と言う存在を知りましたね。
松永:浜崎さんは当初から水玉の衣装でステージに立っていたんですけど、気がついたら浜崎さんを模して水玉柄をまとった子たちが増えてきた。それを見て逆に感化されて『水玉病』という曲を作ったんです。
「水玉病」MVはこちら> https://www.youtube.com/watch?v=ITgRMiEWggY
――それはメンヘラをという言葉が定着した後に出てきたアーティストたちと異なる点ではありますよね。まず表現があってそこにカルチャーの磁場ができた。
アーバンギャルドの表現自体、一貫して病を一歩引いて冷静に見ている部分はあります。それは浜崎さんが感情を全面に出すタイプのボーカリストではないことにもあらわれているような。
浜崎:私がシャンソンを習っていた時の恩師が常々おっしゃっていたことなんですが、「歌う時に一緒に泣いてはいけない、自分が感情移入しすぎて泣いてしまったら押しつけになっていまう」と。それが当時10代の自分にすごく響いたんですよね。それからずっと根底にあるんです。
泣いている人の頭をなでてあげるような存在でいたいんです。だから淡々として見えるかもしれないけど、自分が泣いてはいけないなと常に思っています。
松永:メンヘラミュージシャンも当事者型と表現型がいますよね。たとえば前者は後藤まりこさんやCoccoさん、後者は初期の椎名林檎さんとか。
浜崎:とは言っても私自身当事者なんですよ? 毎日錠剤飲んでますけど(苦笑)。当事者であるということを、自分自身が歌や表現でそれを出していることは美しいかどうか考えると……、ちょっと美意識に反するかなと。
松永:僕らはやっぱり創作をしたくて、多分僕自身にも少なからずメンヘラ要素はあると思うんです。
浜崎:少なからずどころか……。今でも「メンヘラを茶化してるのか!」みたいなことは言われるのは驚きますね。
松永:いまだに言われる?
浜崎:「傷ついている人もいるんですよ」みたいな意見をもらうことはあります。私のことを「メンヘラを演じてビジネスにしている」みたいな。
松永:そもそもガチのメンヘラの定義が難しいですよね。
浜崎:そこを美学として全面に出していないだけで、証拠はいっぱいありますよ!
松永:いい話だなあ。
――いい話なんでしょうか?
松永:昔は当時はメンヘラという言葉は一般的でもなかったですし。昔は今でいうメンヘラ全般を指す言葉は沢山あったと思うんですよね。「ネクラ」「不思議ちゃん」「サイコ系」「精神系」……、色んな言葉があったのが「メンヘラ」でまとめられた。それはインターネット以後の現象ですよね。
以前は心に闇を抱えた人たちがカミングアウトする機会はほぼ存在しなかったのが、ネットを使って全世界に発信できるようになり、そういった人たち同士でSNSのコミュで繋がってコミュニケーションをとれるようになった。メンヘラの「見える化」ですよ。あったじゃないですか、mixiでメンヘラコミュが花盛りだった時代……。
浜崎:ありましたね、「暗黒が好き。」みたいなコミュが山ほど。そこでどんなに人にも皆、承認欲求があるんだなというか、mixiが廃れてもTwitterが流行ってるのも、皆自分のことを認めてもらいたいっていうか。多かれ少なかれどんな人でもそういう欲求があるんだなということを知りました。
松永:承認欲求は、先ほど挙げてもらったキーワード「少女」に結びついていると思っていて。少女というのは昔だったらせいぜい15歳くらいまでの女の子を指していたと思うんです。それが今は「少女性」というか、少女的なるもの、それを宿している女の人全般を指す言葉になったんじゃないかな。
浜崎:なってないよ!?
松永:なってるよ! それはアイドルにしても高年齢化が進んでるじゃないですか。世の中が少女性みたいなものに対して寛容になった。それは日本の国民の平均年齢が45歳くらいになっている日本全体の高齢化、少子化も関係しているのかな。
浜崎:寛容になったというか、国全体が幼くなっている気がします。今の40代・50代の人もすごく若く見えるし、いい意味でも悪い意味でも幼くなった。ずっと子供でいたい、少女を延命させたいというか。