ジェダイの後継であるはずのレイは、ダークサイドをコントロールしている

ダークサイドは本当に拒むべきものなのか?

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で、私が最も印象的だったのは、レイがフォースの暗黒面(ダークサイド)と向き合うシーンです。

伝統的に、ジェダイの価値観では、暗黒面は、避けるべきもの、誘惑があっても断ち切るべきもの、とされてきました。

かのアナキン・スカイウォーカーは、パドメ・アミダラを失うことを恐れ、フォースの暗黒面ならば救えると思い悩んだことが、一つのきっかけとなり、ダース・ベイダーへと墜ちました。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』において、伝説のジェダイ=ルーク・スカイウォーカーによって指摘されたのは、ジェダイは失敗ばかりを重ねてきた、という事実です。

私たちが生活する現実世界では、“我慢すればするほど、欲求は強くなる” という、依存症の研究結果があります。

暗黒面を恐れ、遠ざけようとするほど、その誘惑は強くなり、力も強力にもなり、容姿を激変させるほどに取り込まれてしまうのかもしれません。

拍子抜けするほど何もないダークサイドの世界

けれども、新世代のレイは、フォースの暗黒面を恐れず、誘惑を拒もうともせず、古い世代のルーク・スカイウォーカーを怯えさせます。

しかしながら、不気味に口を開ける、暗黒面の穴に、レイが落ちてみると、底はあっけないほどに浅いのです。

それこそ、私たち観客が、拍子抜けするほどに。

薄暗くはあるものの、恐ろしいというよりは、寂しい、無機的、何もない、という印象を受けます。

レイは、暗黒面のイメージの世界で、混乱してもいい状況だけれど……と述懐しつつも、「これは永遠には続かない」とやけに冷静に行動し、自ら答を得ます。

恐れなければ、暗黒面をコントロールすることはたやすい、とは、言い過ぎでしょうか。

新世代のジェダイの誕生

その後、レイは、「弱さ」とされた自らの親をも受け入れ、完全に覚醒したのか、フォースを意のままに操れるようになっていきます。

ルーク・スカイウォーカーが、対峙するカイロ・レンに、「私は最後のジェダイではない」と告げたのは、まずレイを指していると見て、間違いないでしょう。

何ものでもないレイは、何ものでもない無数の人たちの希望となり、レジスタンスが再び立ち上がる、大きなきっかけとなっていくのでしょう。

カイロ・レンは何者になるのか

“古きもの” に翻弄され続けてきたカイロ・レン

一方、カイロ・レンの物語も、非常に興味深いものです。

ルーク・スカイウォーカーは、弟子としたベン・ソロ(カイロ・レン)の中に、自らでは対処しきれない、強大なフォースの暗黒面の広がりを見ます。

恐れるあまり、本能的に殺害しようとし、思いとどまったものの、師に見捨てられたと悟ったベン・ソロは、ダークサイドに墜ちます。

ところが、ダークサイドに身を捧げてみても、カイロ・レンにとっては、同じことでした。

スノーク最高指導者も、ルーク・スカイウォーカーと同じように、誘惑に負けるな、葛藤に打ち勝て、と要求するだけだったからです。

「ジェダイとなるために暗黒面の誘惑に打ち勝て」が「ダース・ベイダーとなるためにライトサイドの誘惑に打ち勝て」に変わっただけ。

カイロ・レンは、悟ります。

“古きもの” は、自分らしさを捨てろと強要するだけであり、言うとおりにしても何も解決しない。

過去の遺物として葬り去るべきだ、新世代によって新たな秩序を打ち立てるべきだ、と。

ジェダイでもシスでもない “まったく別の何か”

レイが自らの親を受け入れ、フォースを完全に覚醒させたように見える一方、カイロ・レンは、まだ不安定です。

塩の惑星クレイトに、突如として単身で姿を現したルーク・スカイウォーカーに、過剰な反応をし、レジスタンスの僅かな生き残りの殲滅に失敗します。

彼の問題は、ルーク・スカイウォーカーに、「無駄だ。力で倒したところで(父ハン・ソロと同様に)お前と共にある」と指摘されたとおり、過去を受け入れられていないこと。

師であるルーク・スカイウォーカーに加え、手に掛けてしまった実の父ハン・ソロと、実の母レイア・オーガナ。

向き合えたとき、カイロ・レンは、最強のシスとなるのか、最強のジェダイとなるのか、あるいはまったく別の何かになるのでしょうか。

エピソード9が楽しみでなりません。

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