“誠実でリアリティのあるスター・ウォーズ” 3つのテーマ
ディズニーとルーカスフィルムが『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で表現しようとした内容、伝えようとしたテーマは、何だったのでしょうか。
「この映画はスター・ウォーズかどうか?」ではなく、一つの映画としてニュートラルな評論を試みると、瑕疵のあるストーリーと思われた要素が、まったく別の姿に見えてきます。
レタスをレタスだよ、と言って、昔からのファンを怒らせる理由がどこにあったかと言えば、それはやはり、現代の多くの観客に向けて「誠実でリアリティのある物語」にする必要があったからです。
今一度、整理してみましょう。
1. 物事・世の中の仕組みの多面性
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で、繰り返し、寄せては返す波のように立ち現れるテーマは、「立ち位置によって見方は変わる」でしょう。
これまでの「スター・ウォーズ」シリーズは、原則として、ジェダイは善、シスは絶対悪でした。
ところが『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では、最終的には、武力で銀河を支配するファースト・オーダーでさえも、戦争を終わらせ、新しい秩序を打ち立てようとする、革新勢力とわかります。
古い世代のジェダイ=ルーク・スカイウォーカーも、ダークサイドの強力なフォースの使い手スノーク最高指導者も、物語から退場し、残るのは、レイとカイロ・レン。
この二人は、様々な意味で、ライトサイドとダークサイドの狭間にある存在であるとは、前段で確認してきたとおりです。
善と悪は曖昧になり、信じる正義が異なるだけで、目指すところはレジスタンスもファースト・オーダーも、それほど大きくは変わりません。
戦争で金儲けをする武器商人も、ファースト・オーダー(悪いやつ)だけでなく、レジスタンス(善いやつ)にも等しく武器を売っているのです。
ポー・ダメロン vs ホルド提督
また、視点を変えれば、ポー・ダメロンと、ホルド提督の対立が、印象的でした。
エースパイロットとして勝利を目指すポーと、レジスタンスの臨時リーダーとして、大局を見て、反抗の火花を消さない(生き残る)ことを優先させるホルド提督は、対立します。
当初は、現場戦闘員の心情がわからない無能な上司のように見えるホルド提督ですが、むしろポーの行いのほうが、レジスタンスを壊滅目前にまで追い込みます。
フィンとローズを含む、勝手な行動がきっかけとなり、情報が漏れ、塩の惑星クレイトへ脱出をはかる輸送船は、次々に撃墜されてしまうからです。
ホルド提督は、もう少しポーほか現場とコミュニケーションを取ったほうが良かったのでは、という意見もあるでしょうが、情報漏洩のリスクを考えれば(実際に漏れている)、これほど重要な作戦の詳細を、血気盛んすぎるパイロットに、説明しないもの、当然でしょう。
そのポーも、レイアが目を掛けて育ててきた期待に応え、リーダーとして成長し、塩の惑星クレイトでは、(まるで自らのコピーのように)決死の突撃をはかるフィンを止めようとします。