撮影/小嶋文子

クルド人の少女が自らの置かれた状況に葛藤しながらも成長していく姿を描く映画『マイスモールランド』が5月6日(金)より公開される。

是枝裕和監督が率い、西川美和監督が所属する映像制作者集団「分福」に在籍する川和田恵真が監督を務め、日本に実際に居住するクルドの人たちの状況を、クルド人の少女の目線から伝える。フィクションではあるが、そこには多くの人たちが知らないクルド人たちの置かれた厳しい現状が描かれている。

主役のクルド人高校生、サーリャを演じるのは嵐莉菜。日本とドイツにルーツを持つ母親とイラン、イラク、ロシアのミックスで日本国籍を取得している父親のもとに生まれた彼女は、日本で暮らし、日本語を話しながらも自身のアイデンティティに不安を抱えるサーリャに共感し、「私にしかできない!」という強い気持ちでオーディションを受けたという。

本作が映画初出演で初主演、かつ本格的な演技に挑戦するのも初というが、とてもリアルに、繊細にサーリャを演じきった彼女に初めての現場で感じたことを語ってもらった。また、現役高校生で、ViVi専属モデルとして活躍中の一面についても明かしてくれた。

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この役は絶対に演じたい

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会

――本作への出演が決まった経緯を教えてください。

マネージャーさんから今回のオーディションのお話を聞いて、いつかは演じることをやってみたいと思っていたので受けさせていただくことにしました。オーディションというものを受けること自体が初めてだったので「緊張する!」って思ったんですけど。

それに私が演じたサーリャの設定やストーリーを聞いたときに、「この役は絶対に演じたい」と強く思いました。

――これまで演技の勉強はしていたのですか。

幼少期から小学生くらいまでは、再現ドラマのお仕事をたまにやらせていただいてはいたんですけど、今回のような本格的な演技は初めてでした。

「演技をやってみたい」とは思ってはいたんですけど、こんなにも早くお話をいただけると思っていなかったので、まさかという感じで何の準備もできていなくて。

撮影/小嶋文子

――そうすると、演技は監督から教えていただくような?

私から監督に質問をさせてもらっていた感じです。脚本を何回も読んで、「こういうとき、私だったらこんなふうに言うんですけど、サーリャはどういうふうに言いますか?」など。

実は最初、監督に質問をしてもいいのかためらっていたんです。でも監督から「何でも聞いてね」と言っていただけたのでたくさん質問しちゃって(笑)。監督と話すことでサーリャが作り上げられたな、という感じがすごくあります。

――撮影前にはワークショップも行われたそうですね。

自分でも事前にクルドについて勉強もしたし、脚本を読んで自分なりにシーンをイメージはしていたんですけど、ワークショップで実際のクルド人の女の子と会ってお話をすることができたことで、よりサーリャのイメージが湧きました。自分の感情に直接響いたというか。

趣味の話とか、楽しい話もたくさんしたんですけど、その中で、「大学に行けるかわからない」とか、「(現在住んでいる)埼玉県から出られない」とか……調べているときは脳だけに入っていたものが実際にお話を聞くことで全身で感じられたような。

サーリャを演じているときは、そのときの感覚がずっと心のどこかにありました。他にもクルド民族について知らなかったこともたくさん知れましたし、すごく貴重な経験でした。

自分が知らなかっただけで、こんなことが身近にあるんだって。知らなかった自分を「ヤバイな」って思ったり。行動制限をされていて自分が住んでいる県外には出られないから、友だちと遊びたくても好きなところに行けない、とかはすごく驚きました。

「悲しいな」とか、「つらいだろうな」とか、それこそ「自分ヤバイな」とか、いろんな感情が溢れたんですけど、だからこそ「しっかりとサーリャを演じたい」って、強く思いましたね。