太陽光としか思えないクオリティの光を提供してくれる「CoeLux」

【木村ヒデノリのTech Magic #116】 日当たりは気にしなくていい、そんな時代が来るかもしれない。「CoeLux(コエルクス)」はイタリアのハイテク企業CoeLux Srlが開発した太陽光照明だ。物理的に光学的大気現象を再現するという仕組みでまさに太陽光そのものを人工的に作り出している。大気の拡散による自然な青空と色に拠らない透明感のある太陽光は、脳が太陽光と勘違いするレベルまで忠実に再現されている。住宅ではこれまでどうしても暗くなってしまう部分があったが、CoeLuxであれば自然光が取り入れられない場所を快適に変貌させてくれる。新モデルが登場してさらに活用の幅が広がった太陽光照明の最前線を追った。

照明との差は歴然、太陽光照明なら地下にビルを建てられる

CoeLux Srlは2009年に設立されたハイテク企業で、Paolo Di Trapani教授を中心に太陽光の物理的再現に取り組んでいる。2014年にハイエンドモデル「CoeLux 45HC, LC, SQUARE, 60」を発表、2017年には第2世代となる「CoeLux ST(スカイテールズ)」をリリースし、その開発力の高さが話題を呼んだ。STからは調光や国際標準規格であるDALIシステムに対応。コンパクトモデルであるSTを数十個並べても個別に調光や不点灯などの監視ができ、コントローラー盤などを使えばPCやタブレットからもコントロールが可能になる。

最近では蛍光灯やLEDといった一般的な照明にも太陽光と似た波長を持ち、時間とともに変化させられるもの(波長可変光源)が出てきているが、CoeLuxの光は全くレベルが違う。

他の照明と違い、青空や差し込む角度、室内での拡散まで忠実に再現されているので、見学に来た方の半数は「あれ、ここ最上階じゃないですよね?」と勘違いするほどである。光の成分だけでなく「ここに自然光が差し込む窓がある」と感じさせてくれるのがCoeLux最大の特徴だ。「地下にも高層ビルのような建物がある未来を実現したい」という創業者の言葉に説得力を持たせるのに十分なクオリティだろう。

月夜まで再現! 圧倒的な体験を生むハイエンドモデルがすごい

さらにハイエンドモデル「CoeLux45HC Sun Plus & Moon」では闇夜に浮かぶ月まで再現してくれるというから驚きだ。別途モジュールを装着することでリアルな月を映し出し、就寝時も天井が無いかのような感動を創り出す。これは他のどのメーカーも実現していない唯一の体験だ。

最大サイズは1710×850mmとかなり大きい。もちろん昼間は太陽が見えるようになっており、小さい部屋を開放的に見せる効果もある。またCoeLux 45 Squareは壁に窓があるように見せられるタイプで、地下などにも快適な空間が作れる。実際に採光目的で窓が作れる場所は限られているし、作れたとしても天窓などはメンテナンスが面倒だというデメリットもある。こうした制約に配慮することなく自然光の入る部屋を作れるのならば、これまで使われなかったスペースにも活用法が出てくるだろう。ひいては建築物の概念すら変える可能性を秘めているのだ。

こだわりの設計、最新モデルでは1日の変化を再現

CoeLuxの光がここまでリアルに感じられるのは設計によるところが大きい。初期モデルでは光の差し込み方と光源の見え方にこだわりをもって作られている。というのも、太陽が見えるハイエンドモデルでは光源は見えていて問題ないのだが、それ以外のシリーズでは空だけが見えているという仕様になっていてこれが実は難しい。STシリーズではルーバーを外して覗き込むとLED光源は粒が列になっている様子が見えてしまう。これだと自然光だという雰囲気が大幅に損なわれてしまうので、ルーバーを装着することで見えないようにしていたのだ。斜めに光を出すためには仕方のない仕様だったのだが、CoeLuxはこれをルーバー無しでも見えないよう改良してLSシリーズをリリース。こうしたこだわりの積み重ねが他企業の追随を許さないCoeLuxの品質を生んでいるのだと感じた。

これだけでも十分すごいのだが、最新モデルのHTとHT miniシリーズでは待望の日の出から日没までを再現できる機能まで搭載された。他にも上から下への直線的な照射にしたことで設置高も半分程度になり、これまで天高が足りなくて設置できなかったような場所へも設置が可能になった点も良い。特に日本の一般住宅ではあまり天高が取れないことが多かったので従来モデルは使いづらかったが、新シリーズならリノベーション用途にも適していると言えるだろう。

HT miniはHTよりもサイズが小さいので、複数を小さいスペースに設置することで部分的に太陽光を取り入れることもできる。トップライト用途でデスク周りに導入するのも良いが、個人的におすすめなのは少し高い位置につける手法。暗さと自然光のコントラストで、自然光がある地下空間のような独特の雰囲気を出せるので、スパやエステサロンなど商業用途の演出に向いているだろう。

さらに直近でラインアップに加わったSkylineは空がほとんど見えない細長い形状なものの、広範囲に綺麗な拡散光を作り出してくれる。美術館やエントランスで活用すればスポット照明とのバランスで良い雰囲気を作れるだろう。また、日本のタワーマンションは玄関からリビングまでの廊下が非常に暗くなる傾向にある。ここに導入すれば薄暗い場所がない理想的なリノベーションも可能になる。

採光や建築の概念が変わる未来

ここまで品質の高い太陽光照明であれば、従来のように必ずしも南側にリビングを持ってこなくてもよくなる。筆者は今進めているプロジェクトでもベッドルームをあえて暗い方角へ持ってきてSun Plus & Moonを設置する予定だ。毎日月明かりと良質な音楽で眠りにつけるかと思うとなんとも贅沢である。日本では画一的な住居が提供されがちだが、少子化も考えるとこれからは独自の家を考える時代に突入する。それがリセールバリューも高めてくれるのだ。これから家を建てるという方はぜひこうした持続性のある新しい技術の導入を検討してほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)

木村ヒデノリ

ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

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