「怖かったことといえば、実家の部屋を片付けていたとき。

就職してひとり暮らしを始め、残った荷物を整理しに戻っていたのですが、机の引き出しの奥から一冊のノートが見つかりました。

紙はボロボロだし表紙の絵は古いし、『小学生の頃にでも使っていたのかな?』と思いながらめくってみたら、中は下手くそなイラストとか字の練習とかで思わず笑ってしまいました。

いつ書いたのかは思い出せないけど、私の字に間違いなくて。

真ん中くらいのページを開いたとき、大きな赤い丸と真っ黒な人形が目に飛び込んできてびっくりしました。

そこだけ明らかにタッチが違うというか、筆圧が強くて紙がたわんでいるのですよね……。

塗りつぶされた赤い丸が不気味で、『え、これも私?』と昔を思い出そうとするのですが、こんなものを描いた記憶がありません。

黒い影は人間にも見えるけどみんな同じサイズで5つほど描かれており、我が家は4人家族だし意味不明なのも怖かったです。

次のページからはまた私のイラストが始まっていて、ほかの筆跡と同じ。

赤い丸と人形は『もしかしたら友達が描いたのかな?』と思ったけど、とにかく不吉な雰囲気で胸がざわざわしました。

思い出すのは、小学生のときは両親の仲が悪くて姉と気まずい思いをしながら部屋にこもっていたことで、そのときのストレス発散だったのかもしれません。

でも、この赤い丸と人形を描いたのが私とはどうしても思えなくて。

そもそもこれが入っていた引き出しは中にあったものはほとんど処分していて、そのときに見つからなかったことも、いま思うと不気味です。

捨てるのが怖くなりまた引き出しに戻してしまったけど、家族にも言いづらいし、お盆に戻るのがちょっと憂鬱です」(女性/22歳/サービス業)

自分が使っていたノートには違いないけど、そこだけ異様な雰囲気を放つページは理由がわからず混乱します。

それを描いた場面を思い出せないことも怖く、処分するのをためらいますよね。

「誰が」それを描いたのか、どうして今まで気づかなかったのか、過去を振り返るのは相当の勇気が必要になります。