森麻季(C)Yuji Hori.jpg

 森麻季は、日本を代表するスター・ソプラノだ。透明感あふれる美声と端麗な容姿で圧倒的な人気を誇る。
 その森麻季が企画し、今年で12回を数える人気のコンサートシリーズが「愛と平和への祈りを込めて」。きっかけは9.11や東日本大震災だった。
 「9.11や3.11に衝撃を受け、同時に『音楽の力』に気付きました、それで、音楽をだけでなくメッセージを届けるコンサートをやりたいと思ったのです。今もコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などいろんな出来事が起こって、皆さん先が見えない不安を抱えている。そんな時代に音楽によって悲しみや苦しみが浄化され、ホッとする時間を持っていただけたらと願って始めました」。
今回は、世界的なハーピストのグサヴィエ・ド・メストレを共演者に迎える豪華版。オペラアリアから日本歌曲、ハープ独奏まで多彩なプログラムだ。
「独奏ハープとコンサートをやるのは初めてです。メストレさんはオペラも大好きで、曲をハープに起こした時のイメージをはっきり持っていらっしゃるので、今回はメストレさんの意見を入れたプログラムになっています。ロッシーニの《オテロ》の「柳の歌」は初めて歌うのですが、これはメストレさんが私の声に合った曲だと太鼓判を押してくださいました」。
SNSでは普段の生活も積極的に発信。ペットや息子さんたちとの生活が綴られ、スターの素顔が覗ける。
「家事はやりはじめるときりがないので、楽しんでやるように心がけています。お料理やお裁縫は達成感もありますし、仕事とのバランスで良いメリハリになっていますね。
息子は中学2年生と小学4年生です。子供がいなかったらもっと自分のことに没頭して海外でキャリアを築けたかもしれませんが、子供のおかげで別の幸せをもらえています。歌を歌う時も、作品に込められたいろいろな思いや行間にあるもの、さまざまな『愛』の形を理解できるようになったかなと」。
 10月には、究極の「愛」のオペラである《椿姫》に主演する。「声が充実し、以前は気づかなったことを楽譜から読み取れるようになった」とのこと。こちらも楽しみだ。
 コロナ禍では仕事のない時期も経験。コンサートが再開され、「ホールで音楽をお客様と共有することのありがたさ」を噛み締め、「1回1回のコンサートに全力を尽くす気持ちが以前より大きくなりました」という。森麻季の新たな充実に注目したい。
(音楽物書き・加藤浩子)