飯島寛騎(Photo:Tominaga Tomoko/ヘアメーク:牧野裕大(vierge)/スタイリスト:中西ナオ)

 『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズ、『貞子vs伽椰子』(16)などで知られるホラー界の鬼才・白石晃士が監督・脚本・撮影を務めた『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』が、8月27日から全国公開となる。本作は、異界とつながるたたりの森を舞台に、迫りくる恐怖の真相に挑む映画監督・黒石光司ら5人がたどる運命を描いたオリジナルPOV(ポイント・オブ・ビュー=主観視点)ホラーだ。この作品で、黒石一行に加わる金髪ホスト風カリスマ霊能者・ナナシを演じるのが、「仮面ライダーエグゼイド」(16~17)「警視庁・捜査一課長」シリーズなどで活躍する若手俳優の飯島寛騎。ホラー映画初挑戦の舞台裏を聞いた。

-二転三転するジェットコースター的なストーリーと、POV形式の臨場感あふれる映像に、最後まで引きつけられてしまいました。オファーを受けたときの感想はいかがでしたか。

 今までやったことのないジャンルだなと思いました。台本にもカタカナが多く、声のトーンや振る舞い方、不思議な感じをどんなふうに見せるのか、白石監督と相談しながら、細かく作り込んでいきました。

-上下を黒で固めた衣装も、ナナシのキャラクターを際立たせていますね。

 衣装は、セットアップのかっちりとしたジャケットを着ることになった後、「中はどうする?」という話になり、黒や白のシャツを着てみたんです。でも、それだとホストにしか見えなくて。ナナシは“ホスト風”なだけで、ホストではないので、その辺のニュアンスが監督も僕もしっくりこなかったんです。そこで、たまたまそこにあった水色の入った爽やかなカラーリングのシャツを着てみたら、「これじゃない?」って。そこから、右手だけグローブをつけよう、みたいな感じで、一つずつ発見しながら決めていきました。

-白石監督からは役についてどんな話がありましたか。

 監督からは、キャラクター的に「力んでいない方がいい」と言われたので、歩き方はちょっとだらしなく、常にたばこを吸っている感じにしました。でも、やるときはやる。ただし、「ガラッと変わる」のではなく、「よっこいしょ」ぐらいのギアの入れ方で。そういうものが、衣装が決まった段階で自分の中にスッと入ってきた印象です。

-演じる上で苦労した点は?

 ナナシは化け物と戦う場面が多いんですけど、全部CGで作っているので、現場には何もないんです。そういう“見えない敵”と戦うのが難しかったです。何もないところに向かって、想像しながら殴ったりしなきゃいけなかったので。はたから見ると、かなりシュールな光景だったんじゃないかな(笑)。でも、結果的にはきちんとした映像になっていたので、ほっとしました。

-POV形式ということで、黒石役の白石監督自身がカメラを持ち、移動しながらかなりのワンカット長回し撮影をしていることが本作の特徴です。その分、NGを出すと時間も大幅にロスするので、撮影は大変だったのでは?

 それでも、ワンカットあたり、10テイクぐらいは回したんじゃないでしょうか。最初から最後まで通しでやって、ちょっと芝居が違うだけで「ごめんなさい、もう一回」、画角がちょっとずれただけでも「こっちだった」、「気持ち遅かった」っていう感じで。監督の頭の中に完成図があるので、それを体現するのは大変でした。ただ、監督はご自身のイメージを言葉や体でしっかり伝えてくれたので、自分の中にスッと落とし込むことができました。

-ワンカットが長いので、10テイクも回すと、集中力を保つのも大変そうですね。

 そうなんです。だから、できるだけ気持ちをフラットに保つように気をつけて。真夏の撮影だったので、暑さもあり、疲労もすごかったですし。ただ、基本的には日のあるうちに撮って、日が落ちたら終わりだったので、毎晩ぐっすり眠ることができました。現場自体の雰囲気も和やかで、すごくやりやすい環境でした。むしろ、変な音を立てないようにしたり、いろいろと神経を使ったスタッフさんの方が大変だったかもしれません。とにかく暑くて大変だったんですけど、キャスト、スタッフみんなで助け合いながら作っていった感じです。

-チームワークが大事だったわけですね。そういう意味では、白石監督の他、堀田真由さんや筧美和子さん、宇野祥平さんといった人たちが、ナナシと同行する人物を演じていますが、現場では皆さんとどんなふうに過ごしたのでしょうか。

 皆さん、ギスギスしたところがなかったので、すごく居心地はよかったです。ちょうど夏休みの時期だったので、空いた時間にはちょっとした夏休み気分を味わったりして。堀田さんが「この夏、花火をしていない」というので、小さな花火を買ってきてみんなでやったり、道の駅が控室だったときはアイスクリームを買いに行ったり…。宇野さんとは「仮面ライダーエグゼイド」でご一緒して以来だったので、いろんな話もしましたし。

-そんな苦労の末に完成した作品を見て、ご自身が演じた中で印象的だったシーンを教えてください。

 僕は中盤から登場するんですけど、急に金髪が出てくるので、自分でも結構衝撃的でした。「あ、これか!」って(笑)。そこからまた新しい展開を迎えるきっかけにもなるので、ぜひ注目してください。その後も、敵がどんどん強力になっていくんですけど、一緒にいる人たちがみんなテンション高い中、ナナシだけクールな感じでリアクションが違うんです。ハラハラドキドキする物語の中で、そのギャップを楽しんでほしいです。

-そういう意味では、俺様キャラ的な言葉遣いや金髪も含めて、ナナシはこれまで真面目な人物を演じることが多かった飯島さんのイメージをくつがえす役で、驚かされました。その点も含め、この作品を経験して、役者として成長につながった部分はありますか。

 やったことのないジャンルの作品だったので、また新しい表現を見つけることができ、すごく勉強になりました。普段の自分とも全然違いますし、そういうことをやれる楽しさも大きく、僕にとってナナシはすごく魅力的なキャラクターでした。監督に向かって「邪魔だ、どけ」なんてせりふは、普段絶対に言えませんし(笑)。ガラッと変わった役なので、今までとは違う飯島寛騎を見せられたんじゃないかと思います。ホラーの苦手な僕でも楽しめたので、ぜひ皆さんにも楽しんでいただけたらうれしいです。

(取材・文/井上健一)

 8月27日(土)から新宿ピカデリーほか全国劇場で【3週間限定】公開&デジタル配信開始。「WOWOW オリジナルドラマ オカルトの森へようこそ」金曜午後11時30分から【WOWOWプライム】で放送中。【WOWOWオンデマンド】で配信中。無料トライアル実施中[全6回]【ひかりTV】でも配信中。