オリジナル作品は最後まで自分で
古沢良太のデビューのキッカケは、2002年の第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞だった。マンガ家のアシスタントを題材にした『アシ!』という作品で大賞を受賞し、2003年1月に伊藤淳史と宮迫博之の共演で映像化されている。その年の4~6月期に放送された『動物のお医者さん』では、さっそく連ドラの脚本家グループに参加。全11話中5話を執筆している。
ちなみに、この作品に演出家のひとりとして参加していたのが、山崎貴だ。2年後に山崎貴は古沢良太を脚本に迎えて『ALWAYS 三丁目の夕日』を監督し、第29回日本アカデミー賞の主要13部門のうち12部門で最優秀賞を受賞することになる。
この『動物のお医者さん』には、主人公ハムテルの友人・阿波野萌役でフジテレビ入社前の平井理央も出演しているので、現在ではかなりお宝度が高くなっている。
『ALWAYS 三丁目の夕日』は2005年11月に公開された映画だが、古沢良太はその年の10月から始まった『相棒 Season4』にも脚本家のひとりとして参加している。以降、『相棒』シリーズには必ず参加していて、Season11までに合計16本の作品を執筆。
じつは、『相棒』のプロデューサー・松本基弘が『少年H』のプロデューサーでもあり、映画には『相棒』チームから水谷豊だけでなく、岸部一徳や國村隼も出演している。
2007年になると、オリジナルの映画『キサラギ』や『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が公開。そして、古沢良太にとっては初のオリジナル脚本の連ドラとなる『おいしいごはん 鎌倉・春日井米店』も、10~12月期にテレ朝系で放送された。
「連ドラをひとりで書くのは楽しいと思った作品でした。原作モノの場合はまた違うんですが、オリジナルで全部自分が作った物語の世界や人物は、やっぱり全部自分で書きたいという気持ちになります。他の人に書かせてたまるか、みたいな感じですね(笑)」
この作品は、渡哲也、藤原紀香、徳重聡、羽田美智子、水川あさみ、余貴美子などが共演したホームドラマ。シリアスなテーマも扱っていたのだが、そこをコメディテイストでうまくくるんであって、かなり見ごたえのある面白い作品だった。
「自分では基本的にコメディ書きだと思っています。まあ、書いていて楽しいってことですね」
残念ながら視聴率はあまり高くなく、現在までDVD化もされていないが、古沢良太を語る上では決して見逃してはいけない作品のひとつだと言える。
そして、2008年7~9月期に『相棒』でお馴染みのテレ朝水曜9時枠で放送されたのが、やはりオリジナル脚本の連ドラ『ゴンゾウ 伝説の刑事』だ。内野聖陽が主演した刑事ドラマだが、じつは刑事ドラマの体裁を借りた重厚な人間ドラマだった。古沢良太はこの作品で第27回向田邦子賞を受賞している。
「ひとつの殺人事件を、全話かけて描くことをやりたかったんです。連ドラというのは、1話1話見たときのカタルシスや充足感がなくてはいけないので、1話ずつ事件が解決したほうが作りやすいものなんです。でも、事件を解決させないで、別のカタルシスを毎回つくるということに挑戦しました。事件とは違う人間ドラマの部分でクライマックスをつくるというのは、難しいことではありましたが、楽しかったですね。あと、一話完結型にしたら他のライターが入ってくる可能性もあるので、こうすれば自分しか書けないだろうという思いもありました(笑)」