Netflix映画『バルド、偽りの記録と一握りの真実』の来日記者会見が29日、東京国際映画祭が開催中の日比谷BASE Qで行われ、13年ぶりの来日となったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が登壇した。
本作は、イニャリトゥ監督が自伝的要素も盛り込みながら、一人の男の心の旅路をノスタルジックに描いたヒューマンコメディー。
まず、イニャリトゥ監督は、14年ぶりに復活した、同映画祭の「黒澤明賞」を受賞したことについての喜びを語り、『羅生門』(50)『生きる』(52)『七人の侍』(54)など、影響を受けた黒澤監督の映画について熱く語った。
本作を企画した意図についてイニャリトゥ監督は、「私は、21年間アメリカで移民として生きてきました。祖国(メキシコ)を去った自分と、国に帰ってもまたアメリカに戻る自分という、2人の自分がいます。どちらの国にも属していないし、もう戻ることもできません。自分のアイデンティティーの行き場がないと、いかに恵まれていたり、成功したとしても、満たされないものがあります。そうしたテーマにアプローチをするには、ユーモアが有効で、それが魂の傷を癒やすと考えました」と語った。
また、自身の体験も交えた“集大成”ともいえる本作を経た、今後のビジョンについては、「この映画は、現実と空想の間を漂いながら、記憶とは何か、真実とは何かを問い掛ける作品です。こうしたことを試みると、例えば、自分の無意識下にある、思い出したくない記憶が出てきたりします。これは発想の源としては素晴らしい素材だと感じました。今回、自分の中にあるこの素材を、うまくフィクションに生かすということに興味が湧いたので、今後は、そこから、何か発展させていければと思っています」と語った。
最後に日本の観客に向けて、「この映画は、私の個人的な視点に起因していますが、父性、喪失感、愛情、不確かな感情といった、普遍的なテーマを描いているので、皆さんにも受け入れられるものがあればいいと思います。メキシコと日本はとても離れていますが、私は親近感を抱いています。この映画は、いろいろなものを混ぜ合わせたメキシコのグアカモーレという料理のようですが、全く地球の反対側にある日本とメキシコの、橋渡しになるような、魂が呼応し合う作品になればいいと思います」と語った。
映画は12月16日からNetflixで独占配信。