「はあ~…いつまでたっても給料上がんないな~…」

有史以来、働く人々の間でつぶやかれてきたこのセリフ。「こんなに働いても給料が上がらないなんて、ひどい会社だ!」。虚空にそう叫んだ人も少なくないだろう。

そんな安月給派にとって聞き捨てならないタイトルの本がある。それが今回取材させていただいた、木暮太一さんの『ずっと「安月給」の人の思考法』(アスコム)だ。ん? 安月給って、あくまで会社の経営とか景気の問題でしょ? 自分の思考に問題があるって、どういうことなんだろうか。

ということで、まずはこの質問をぶつけてみた。そもそも「安月給に陥りやすいタイプ」とは、一体どんな人なのだろう?
 

「一番大きいのは『ルールを把握していない人』ですね。世の中のルールも会社のルールも把握しないで、何も考えずに動いちゃう人は、安月給になってしまうと思うんです。何かを改善しようと思っても、とりあえず自分が置かれている状況を把握しないと、対策のしようがないと思うんですよ」
 

「給与明細」と「就業規則」を例に挙げてみよう。給与明細は毎月の給料の内訳が記載された大事な資料、就業規則は会社での働きかたの規則が網羅された言わば「会社のルールブック」だ。

どちらも自分の現状を把握するうえでとても重要なものだが、毎月の給与明細をすみずみまで読んでいる人や、自分の会社の就業規則を完全に把握している人は、ほとんどいないのではないだろうか。「結果しか見ない人は、知らない間に損している可能性が高いんです」と木暮さんは警告する。
 

「価値」と「使用価値」の違いに隠された、給料のカラクリ

まずはルールを知らないと、敵との戦い方もわからない。それは会社に限った話ではなく、社会全体でも同じことが言える。本著でも大きく取り上げられている、マルクスの『資本論』に沿って解説された「価値」と「使用価値」の話がそれだ。簡単に説明すると、

「価値」=あるものを作るためにかかった手間やコストの大きさ
「使用価値」=あるものを使ったときに得られるメリット

となるのだが、ここに私たちの「給料の秘密」が隠されている。
 

「普段多くのビジネスパーソンは、お客さまのメリットを第一に考えていると思います。そのため、商品のメリットだけ考えていけば商品が売れるようになる、と考えがちなのですが、資本主義経済においてはすべての商品において「その商品をいくらで作ったか」ということがベースになって値段が決まっているのです。

それは僕らの労働力の値付け=給料に関しても同じ事です。労働力の値段も、『労働力の価値』によって決まっている。『労働力の価値』とは、「自分自身が明日働くために必要な原価」ということになります。その原価がそのまま給料になるのです。多くの人は成果を上げれば給料が上がると思っていますが、実際は自分の『労働力の原価』を上げることでしか給料は上がらない。これが今の社会の仕組みなんです」