ずっと変わらなかったからこそ持てた、強さと深さ
例えば町のラーメン屋で何十年も休まずラーメンを作り続けてるおっちゃんには、味の是非というレベルじゃなくその人自身に宿る独特の強さや深さみたいなものがある。BUMP OF CHICKENが作るのはラーメンじゃなく音楽だけど、いまの彼らにも、ひとつのことを掘り続けてきた者だけが持ちうる、揺るがない説得力がある。
今回のスタジアムライブで披露されたのは、下記の12曲。『firefly』『虹を待つ人』以外は、すべてベスト盤からの選曲だ。
M1 Stage of the ground
M2 firefly
M3 虹を待つ人
M4 オンリー ロンリー グローリー
M5 プラネタリウム
M6 花の名
M7 ダイヤモンド
M8 メーデー
M9 カルマ
M10 K
M11 天体観測
ENCORE
M1 ガラスのブルース
この日ライブでこれらの曲たちを聴いて今さらながら驚いたのが、もっとも古い『ガラスのブルース』から最新曲『虹を待つ人』まで、曲の中で歌っていることがほとんど、まったくと言っていいほど変わっていないことだった。
彼らと同じくらいのキャリアを重ねたバンドの場合、新陳代謝を図るべく新機軸を打ち出したり、新たに歌うべきテーマを模索することも珍しくない。でもBUMP OF CHICKENはそれをしない。彼らは一貫して同じテーマを、かたちを変えて繰り返し繰り返し伝え続ける。キャッチーな変化や進化よりも、自分自身を掘り下げ、深化を続けるバンドなのだ。
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BUMP OF CHICKEN(=全楽曲のソングライティングを担当する藤原基央)は、一貫して「自分が今ここに生きているということは、一体どういうことなのか」を考え、歌い続けている。突き詰めると彼らが歌っていることは、これだけである。
こう書くと、どうにも偏屈で青臭いバンドというイメージを持つ人もいるだろう。確かに1年365日「自分はどう生きるべきか」と考え続けている人は相当な変わり者だ。そんな哲学的な問いに向き合い続けるのは、正直しんどかったりもする。だから私たちはそのことを簡単に忘れてしまったり、時にはないがしろにしてしまう。そうしないと怒涛のように押し寄せる日々をやりこなせないからだ。
だからBUMP OF CHICKENは歌い続ける。私たちがそれを本当に忘れてしまいそうになったときのために、すぐに思い出せるようにと、音と言葉を鳴らし続けてくれているのだと思う。