升秀夫/photo by 古溪一道  拡大画像表示

ずっとあるものだと思って長い間行ってなかった町のラーメン屋がなくなっていたときの、あのなんとも言えない寂しさ。または久しぶりに行ったラーメン屋で、好きだったラーメンの味が変わってしまっていたときの虚しさ。彼らはファンに対してどちらの思いをさせることもない。だから、かつてBUMP OF CHICKENを愛し、もしいま離れてしまっている人がいたとしたら、安心して戻ってくればいいと思う。

例え長い間離れたとしても、そこに帰ればいつでも変わらない姿でいてくれるから。そしてその戻ってくるタイミングとして、いまほど相応しいときはないと思う。なぜならあなたが離れている間にも、変わらずていねいに出汁を取り、力強く麺を打ち、命がけで作り続けてきた一杯のラーメンの味は、より味わい深くなっているからだ。

ただ、これまで変わらないでいたことと、これからも変わらないでい続けられるかどうかは、まったくの別問題である。メンバーの直井はこの日のMCで「いつも同じようなこと言ってると思うかもしれないけど(笑)、俺、本気です! 明日が当たり前に来るなんて思ってないし、また次もみんなとライブできるなんて思ってないんで。いまこの瞬間、全力でバンプは燃えるんで」と語った。これまでと同じように、いつまでも歌い続けられるなんて思っていない。だからこそ、彼らは歌い続ける。歌い続けようとする。

この日のライブの構成も、そんなBUMP OF CHICKENというバンドの本質を反映したものだった。まず自分がいま立っている場所を再確認し(『Stage of the ground』)、折り返し地点でこれまで歩いてきた道のりを振り返り(『ダイヤモンド』)、アンコールで自身の出発点に立ち返る(『ガラスのブルース』)。何度も立ち止まり、考え、時には引き返し、それでも前へと進んでいく。そんな実直すぎるやり方で歩んできたバンドの集大成と呼べるステージに、3万5000人もの大観衆が拳を振り上げて応える光景は、とても感動的だった。