ソリストの個性と優れたテクニック、指揮者や奏者たちとの生きたコミュニケーション、そしてオーケストラの豊かなサウンドを楽しむことができる、協奏曲の世界。2月8日に東京オペラシティコンサートホールで行われる「明日を担う音楽家たち2023~新進芸術家海外研修制度の成果」では、異なる楽器を奏でる4人の若きソリストがステージに立つ。
 彼らはいずれも厳しい選考を突破してチャンスを掴み、文化庁の「新進芸術家海外研修制度」により海外で研鑽を積んだ、気鋭の奏者ばかり。
それぞれが憧れのコンチェルトのレパートリーをもって、角田鋼亮指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団と共演する。レアな作品から有名曲まで、オーストリア、フランス、ブラジル、ロシアをめぐる、バラエティに富んだ4つの協奏曲が揃った。

 チェロの三井静は、オーストリアのザルツブルク・モーツァルテウムとウィーン市立音楽芸術大学で学び、現在は、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ奏者として活動する。彼が研鑽を積んだ地、オーストリアが誇る大作曲家、ハイドンのチェロ協奏曲第2番で、優美で気品あふれる音楽を披露してくれる。
 袴田美帆は、2022年にパリ国立高等音楽院修士課程を修了、現在も同音楽院の室内楽科と即興科でさらなる研鑽を積みながら活動するサクソフォーン奏者。演奏するのは、20世紀フランスの作曲家、アンリ・トマジの作品。彼女より約100年前にパリ国立音楽院で学んだいわば“先輩”の手によるサクソフォーン協奏曲で、楽曲への共感を示してくれることだろう。
 東京藝術大学卒業後、フランスのリヨン国立高等音楽院大学院を修了した長哲也は、現在、東京都交響楽団の首席ファゴット奏者として活動する。彼が選んだのは、ブラジルを代表する20世紀の作曲家、ヴィラ=ロボスの「7つの音のシランダ~ファゴットと弦楽合奏のための~」。演奏機会の少ない隠れた名曲を生演奏で聴くことができる、貴重なチャンスだ。
 大崎由貴は、東京芸術大学ののちザルツブルク・モーツァルテウムで学んだピアニスト。これまでにもソリストとして国内のオーケストラと共演してきた彼女は、今回、ロマンティックな音楽が広く愛されるマスターピース、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏する。壮大なスケールの音楽、華麗なピアノのテクニックを存分に味わうことができるだろう。

 フレッシュなソリストたちが、ヨーロッパの空気を吸い、文化を生き、音楽を学んできた成果を披露する、一夜限りの華やかなコンサートとなりそうだ。