高橋と齊藤は同世代

――齊藤さんと高橋さんは同世代ですけど、同世代同士ということは意識していましたか。

齊藤:結果的にプロデューサーの小林(有衣子)さんも、出演して音楽も担当してくれた金子ノブアキさんも、編集や音響効果のスタッフも同世代だったから、現場では同じ時代に体感したカルチャーなどが確かに共通言語になることはありました。

それは仕上げの段階でも強く感じました。

ただ、一生さんは、同世代ということだけでは括れない稀有な方だから、年齢的なことはあまり意識したことはなかった。

ただ、会話の中でヒントになる言葉をいただくことがけっこう多くて、中でも『インディアン・ランナー』(91)というキーワードは大きかったです。自分も大好きな作品で、俳優のショーン・ペンが映画のディレクションをしているという意味合いも含めて、自分が目指す方向性が見えたんです。

金子とも音楽の打ち合わせのときにニール・ヤングの話になったけれど、それぞれの琴線に引っかかった共通の何かが、言葉ではできない会話を成立させていたような気がします。

高橋:僕も工さんのことを最初から俳優として認識していたので、年齢が近いとか、同世代だからといったスタンスでは現場に臨まなかったです。

ひょっとしたら、無意識の中で同世代として合致していたところもあるのかもしれないけれど、とてもフラットだったと思います。

ライバルはユーチューバー!?

――先ほどグザヴィエ・ドランの名前も出ましたけど、齊藤さんの中には下の世代への影響を考えたり、上の世代が作ったものに挑戦するような気持ちもあったのでしょうか?

齊藤:そんな作為があったわけではないですけど、いまの僕は映画界の先人より、ユーチューバーをライバルと思いたい。

2時間の尺が暗黙のルールになっている映画と違い、エスプレッソコーヒーのように抽出した“旨味”だけを短い映像に閉じ込め、それをユーザーが鋭い臭覚で感じとっていくYouTubeは素晴らしいメディアだと思います。

『blank13』も最終的に70分という尺になって、それがこの作品に必要な時間だったわけですけど、それは尺が事前に決まっている多くの映画の制作の流れとは逆の成り立ち。

でも、僕は決め事を作らず、そうした自然な流れの中で映画を作ることができて本当に嬉しかったですね。