「ヴィジュアル系バンドというものが、少し変わり過ぎてしまったんじゃないかなって」

鐘ト銃声・潤-URU-(Ba)撮影・源賀津己

――“性傷年日本劣等倶楽部”というキャッチフレーズがついているように、鬱屈した感情や拗れた性衝動などを題材にした曲が多いですが、このコンセプトは結成当初から決まっていたのでしょうか。

百合子:以前何かのインタビューで「最初からコンセプトがあった」って言ったかもしれないんですけど、多分それは嘘で(笑)、元々コンセプトとかは全然決まっていなくて、どちらかというとスタイリッシュで今風な見た目で、曲がメタルっぽくて歌はかっこいいみたいな、よくあるヴィジュアル系バンドを目指していたんです。

狂ヰ散流:エナメルの衣装とか着てる感じですよね。。

百合子:そう、金髪のね。それでああしたい、こうしたいって試行錯誤しながら曲を作っていたら、『マニキュア』っていう曲ができたんです。その曲をメンバーに聞いてもらったら、初めて全員「いいね」って意見が一致したので、歌詞をつけてそこから広げてバンドコンセプトを作って、今の鐘ト銃声像ができたって感じです。

だから最初はまさか白塗りとか学ランになるとは思ってなかったですね。ちなみに『マニキュア』は、実際にリリースされた『東京都無職小林アキヒト(28)』の原曲です。

――“小林アキヒト”というキャラクターは、他の曲にも度々登場しますね。

百合子:『笑ゥせぇるすまん』っていうアニメあるじゃないですか。ああいう一話完結型のシリーズ物みたいに、色々な曲に“小林アキヒト”っていう一人のキャラクターのストーリーを絡めていったら面白いんじゃないかなと思ったんです。

――百合子さんからこのコンセプトを聞いたとき、メンバーの皆さんはどう思いましたか?

狂ヰ散流:まあ、そうですね。うんー。いいんじゃないかなあって思いました。はい。(何か怯えた様子)

百合子:テキトー(笑)。

潤-URU-:僕は意見がまとまらないのが嫌なんですよね。バンド活動も仕事とかと同じで、人間関係が円滑じゃないと続かないと思うので、基本的には全部いいねって言って進めます。でも、“小林アキヒト”というコンセプトを聞いたときは素直にいいなと思ってそれでいこうって言いました。

詠真:僕もいいなと思いましたね。特定の人物像があるとわかりやすいじゃないですか。実際“小林アキヒト”が歌詞に出てこない曲でも、なんとなく頭の中で絡めて想像してくれたらいいなと。

鐘ト銃声・詠真(Dr)撮影・源賀津己

――現時点(2023年4月)でオフィシャルのTwitterのフォロワー数が1.3万人を超えていますね。同時期に始動した同じシーンのバンドと比較すると、かなり多い数字だと思います。

狂ヰ散流:それ、実は誰も理由がわかってないんだよね(笑)。

百合子:アプローチはセンスですからね。

詠真:昔はオフィシャルのアカウントで百合子が考えたシュールな面白動画をあげてたんですよね。その効果もあるのかなとは思うんですけど。

潤-URU-:ワンカット固定カメラで撮ってた短いやつですね。今載せているのよりもっとくだらない内容で、アツアツおでんを食べさせて、「熱!」って言って終わりみたいな(笑)。他のバンドのオフィシャルが載せないような動画ではありましたね。

――現在もオフィシャルのアカウントでは、ライブの舞台裏やツアーのドキュメンタリー動画が投稿されていますね。どこか懐かしい雰囲気の演出もあり、こだわりが感じられます。

潤-URU-:最近は僕が撮って編集してるんですけど、ライブとかリハーサルの動画以外にも、時事ネタとかネットで騒がれていることを題材にした動画も出してます。子どものころに見ていた深夜番組の演出やちょっとチープな映像の雰囲気が頭の中に流れてくるので、それを落とし込んでいる感じですね。

――潤-URU-さんの「総監督」という肩書は、そこから来ているんでしょうか。

潤-URU-:一応映画監督とかの意味もあるんですけど、正直名前の響きがかっこよくて言ってるだけです。あと僕はみんなの意見をなるべく尊重して活動できるように導く役割だと思ってるので、それを総監督って言ってる部分もあります。

春の日差しを浴びる鐘ト銃声 撮影・源賀津己

――TwitterやInstagramでは海外のファンからの声も多く寄せられていますね。

百合子:僕は海外ファンと日本ファンの間で、ヴィジュアル系像みたいなものにズレがあると思うんです。求められるヴィジュアル系像みたいなものですね。

僕たちが特別なことをしているわけじゃなくて、ヴィジュアル系バンドというものが少し変わり過ぎてしまったんじゃないかなって。その中で分かりやすい活動をしている僕たちが、海外のファンを含めた多くの人の目についているだけなんじゃないかなと。