「バックグラウンドのようなものが見えてこないと、本当に耳に届く反響はとれない」
――鐘ト銃声の“分かりやすいヴィジュアル系らしさ”は、どんな部分だと思いますか?
百合子:音楽じゃないですかね。ヴィジュアル系っぽい音楽ってあるじゃないですか。でも徐々に、ヴィジュアル系らしいといわれた音楽に新しい要素を取り入れるバンドが増えてきて、それが幅広い音楽性とかいった言葉で美化されて、どんどんヴィジュアル系の原型がなくなってきちゃったのが現状なんじゃないかなと思っています。
――オリジナリティや目新しさを追求していくうちに色々なタイプのバンドが出てきたので、ヴィジュアル系のイメージが海外のファンと日本のファンの間でズレてきている。その中で、鐘ト銃声は原点回帰して百合子さんが思うストレートなヴィジュアル系を音楽で表現しているということですね。
百合子:そうですね、バックグラウンドのようなものが見えてこないと、SNSでの人気どうこう以前に、本当に耳に届く反響はとれないと思うんです。そういう意味では僕は『マニキュア』から見つけられたヒントに救われただけなのかもしれません。
みんなも褒めてくれたし、「あぁ、これが正しいんだ」って思いました。あと鐘ト銃声はボーカルの声がいいですね。
狂ヰ散流:あ、ありがとうございます。
――最近鐘ト銃声を知った人に、入り口として聴いてほしい曲はありますか?
詠真:個人的には『真夏の扉』ですね。コンセプトがどうこうっていうのじゃなくて、ただの夏のラブソングって感じなんですけど、聴くだけで情景が浮かんでくるというか、色々な場所に行った気分になれるような曲です。ジャケットにもこだわってるので注目してもらいたいです。
潤-URU-:やっぱりバンドのコンセプトでもある『東京都無職小林アキヒト(28)』かな。ファンメールでも「今日初めてライブに行ったんですけど、小林アキヒトをやっと生で聴けて嬉しかったです!」みたいな声をよくもらいます。
百合子:僕のイチオシ曲は『君がきこえる』っていう曲です。これはGLAYみたいな感じかな。ラブレターみたいな曲です。まだサブスクには出してないんですけど、そのうち出そうと思ってます。
――そういえば鐘ト銃声はサブスクの解禁が早かったですね。
潤-URU-:ライブを数回やった段階でもうサブスク出してましたね。
詠真:2021年の1月とかだったかな。僕らは始動も打ってないし存在が曖昧だったのもあって、最初のうちは動いてる感がほしかったんですよね。だから、「毎月新曲出そう」とか「次はアルバムリリースしよう」みたいな形で、1カ月ごとにバンドの目標を決めてやってました。
百合子:最近ちょっと発表が止まっちゃってるので、そのうちバーンと出してみんなを驚かせたいですね。ここまでバンドの説明書的なアルバムとして、『【小林アキヒトの一生:序】』『【小林アキヒトの一生:破】』の2枚を出したんですが、僕の頭の中には次の3枚目の世界観がもう出来上がっていて。
あとは形にするだけなんですけど、去年の10月頃からはなかなか時間が作れなくて。僕って忙しいんですよ。
――かなり精力的にライブ活動をされていますよね。中でも、今年1月に開催された東京キネマ倶楽部でのワンマンライブ『第8回台東区歌ってみまショー』は、鐘ト銃声として最大規模のキャパシティでのライブでした。ステージに立ってみていかがでしたか?
狂ヰ散流:正直どれくらいお客さんが来てくれるか不安もあったんですが、実際かなり人がいてびっくりしましたね。コールアンドレスポンスでも大きい声がたくさん聞こえてきて……感慨深い気持ちになりました。
百合子:そうだね、キネマ倶楽部に向けて徐々に声出しOKにしてから準備運動にはなったかな。うちのボーカルが声出しにすごいこだわるから。最近じゃもうサークルモッシュとかWODとか、やりたい放題やってます(笑)。
狂ヰ散流:僕たちコロナ禍からのライブだったから、ずっとお客さんの声を聞いたことなかったんです。でも他のバンドもだんだん声出しOKになって順応していってるから、自分たちも負けないように色々導入している感じですね。フロアに下りるとやっぱりお客さんの反応が良く見えて、楽しんでくれてるのが伝わってきます。
詠真:僕としては、キネマ倶楽部っていう大きい会場でライブをやれたことで満足した部分もあるんですけど、その次へ行かないといけないなっていう気持ちですね。自分の実力もまだまだだし、もっと上手くなって戻ってきたいです。あと今回はソールドできなかったんで、次はキャパ制限もなしでソールドさせて、パンパンな状態でライブしたいですね。
百合子:キネマ俱楽部には今までで一番多くのお客さんが集まってくれたんですよ。もちろん今までのワンマンもソールドでお客さんがいっぱいいたけど。バンドで最初の一番大きなステージで、しっかり集客できたことにバンドの可能性を感じられましたね。やっぱり僕ってすごいなと思いました。
――今後の自信にも繋がるライブだったんですね。
百合子:そうですね。僕にとっては最初のキネマ倶楽部は自分へのけじめみたいな所もありました。