脚本の完成度が凄い! 思わず引き込まれるストーリー
愛すべき登場人物たちに加えて、作品にエネルギーを与えているのは、やはり、そのシナリオでしょう。
本作の脚本を手掛けているのは、『ラブライブ!』や『響け! ユーフォニアム』といったヒット作を世に送り出し続けている花田十輝さん。
近年のフィルモグラフィーでは、少女たちを主役とした"青春もの"なアニメ作品での仕事で高い評価と人気を得ており、『宇宙よりも遠い場所』でも、その作家性と作品性とがガッチリと噛み合い、観る者を物語へと引き込むパワーを生み出しているように思います。
夢に向かって突き進む少女たちのキラキラとした明るい景色の中に、周囲の悪意や登場人物たちの葛藤といった複雑な感情も顔を出すコントラストのハッキリした作劇には、思わず見入ってしまうような"物語"としての強度があり、ストレートに作品の求心力に繋がっています。
脚本に凄く強さがあり、それが、キャラクターの魅力を更に引き立て、声優さんの演技や各シークエンスでの演出といったアニメを形作る様々な要素に、熱を呼び込んでいる印象を受けます。
「南極」という壮大なモチーフを使用している点や、先の展開が読めないオリジナルアニメであることも、本作の強みとなっています。極々シンプルな言葉で表現させていただくならば、『宇宙よりも遠い場所』は、常に「続きが観たくなる」作品なのです。
巧みな演出を使って描く繊細な心理描写の数々に注目!
本作の奥行きを更に深いものにしているのが、各話における演出の数々です。具体的には、心理描写を様々なものに託して画面に映すテクニックが、この作品はとても長けている。
例えば、空や照明によるライティング。例えば、信号機や窓といった背景に映り込む無機物。それらに絡めて登場人物の心情を画面に描くシーンが、本作には度々登場するのですが、そのいずれもが登場人物の"心"を明快に、かつ的確に表しており、より一層情感を盛り上げています。
また、そうした演出面での"暗喩"の数々が、視覚的にとても分かりやすい表現となっているのもポイントだと思います。
小難しくならないように、とはいえ、決してわざとらしくならない程度に……巧みに物語の中にレイアウトされた演出による暗喩の数々。そうした繊細で丁寧なシークエンスを読み解くのも、本作における楽しみのひとつです。
思わず人に薦めたくなる『宇宙よりも遠い場所』というアニメ
南極を目指す"冒険譚"としての要素と、少女たちの"青春ストーリー""成長物語"としての要素が高い次元でブレンドされ、眩い輝きを放ちながら物語の佳境へと突入しようとしている『宇宙よりも遠い場所』。
キャラクターや声優さんの演技、ストーリーや音楽……その全てに熱量とエモーションを感じられる本作は、アニメファンならば、決して観て損をしない2018年における名作のひとつとなりえるのではないかな、と。
他にも、国立極地研究所や海上自衛隊の協力による知られざる南極観測の描写や、劇中に散りばめられたポップな小ネタの数々、そして、ミトさんやヒゲドライバーさんといった豪華アーティストが手掛ける主題歌と劇中歌……などなど、様々な語りどころと見どころに溢れた本作。
AbemaTVとdアニメストアでの最速配信をはじめ、各サイトにて公式配信もされていますし、まだまだ、ストーリーに追いつけます! 皆で、キマリたちが目指す南極という"夢"の先にある物語の終着点を見届けましょう!