人気声優、アニソンアーティストの中島愛さんが、自身のソロ名義としては4枚目となるフルアルバム『Curiosity』をリリースされました。

『Curiosity』……"好奇心"という名を与えられ世に送り出された本作は、中島さんの音楽に対する飽くなき好奇心を表現するかのように、全12曲全てに異なる作曲家が楽曲を提供した意欲的な作品となっています。

"十人十色"ならぬ"十二人十二色"な個性と作家性が色濃く出たトラックの数々に、楽曲毎に色を変える中島さんのヴォーカル。

その融合が生み出す"歌"と"音"は、最早「アニソン」や「声ソン」といったカテゴリーをも飛び越え、もっと普遍的な……"ポップ・ミュージック"という表現の真髄をリスナーに伝えてくれるような、そんな魅力的なエネルギーを有しています。

早くも本年度を代表するアルバムの一枚となりそうな大傑作『Curiosity』。本作に惚れ込んだ筆者が、各楽曲の聴きどころを「全曲レビュー」という形でご紹介します。

作詞家と作曲家の組み合わせもおもしろいリードトラック

M1.サブマリーン(作詞:新藤晴一、作編曲:Rasmus Faber)

アルバムの冒頭を飾る曲は、『TRY UNITE!』や『マーブル』といった楽曲で中島愛さんとタッグを組んできたラスマス・フェイバーによる『サブマリーン』。本曲は、アルバムのリードトラックとなっており、MVも制作されています。

ラスマス曲ということでハウスサウンド的なアプローチかと思いきや、この曲は、美しいストリングスの音を活かしたポップチューン。各種弦楽器が中心となって構築されるメロディは、ネオアコ的な要素を感じさせつつも、既存の音楽のどれとも異なる独自性を生み出しています。

中島さんの声質やキーの高さともベストマッチしており、歌とメロディのナチュラルな調和と、そこから生み出される儚げでファンタジックな雰囲気が、とても心地良い。開幕曲にして、アルバム全体への期待値をこれ以上ない程に高めてくれるプレリュードです。

そんな多幸感の高い歌声とメロディの一方で、歌詞は人間の弱さや汚さを描いた、ややダークでセンシティヴな内容となっており、一つの楽曲の中でネガとポジが交錯する構成になっているのがおもしろい。

作詞を担当したのは、ポルノグラフィティの新藤晴一さんで、ラスマス・フェイバーと新藤さんというユニークな組み合わせによる邂逅も、様々なクリエイターを惹きつけてやまない中島さんのアーティスト性ならではの音の連鎖といえるでしょう。

M2.Life’s The Party Time!!(作詞:中島愛&前山田健一、作編曲:前山田健一)

2曲目は、"ヒャダイン"こと前山田健一さんによる『Life’s The Party Time!!』。アニソン、声ソン、アイドルソング、歌謡曲……と、ジャンルレスに大活躍する有名コンポーザーが手掛ける楽曲らしく、ポップス志向が色濃く出た本アルバムの中でも、特にJ-POP的で快活なメロディの強さが印象に残るナンバーです。

前山田さんらしい転調を繰り返す構成は、楽曲にうねりや起伏を生み出しつつも、そのアップダウンを見事に乗りこなす中島さんの歌唱力のおかげで、奇抜さよりはキャッチーなニュアンスが前面に出ており、"ポップス"としてのストレートな煌めきを感じることができます。

ふんだんに使用された装飾音の賑やかな鳴りと共に、要所要所で挿入されるビブラスラップの響きも実に楽しい。

人生をパーティーに例えた"応援歌"な歌詞は、前山田さんと中島さんの共作。そのチャーミングな歌声と共に、リリックメーカーとしての中島さんの才を味わう上でも、歌詞カードを見ながらジックリと聴き込みたくなる曲です。