人気バンドとのコラボによる"オルタナティブ・ロック"なシングル曲も
M8.最高の瞬間(作詞:山田稔明、作編曲:古川貴浩)
続く『最高の瞬間』は、『ワタシノセカイ』のシングルにカップリング曲として収録されていたナンバー。ホーンセクションの音がメロディを賑々しく装飾する、エネルギッシュでポジティブなポップソングです。
通好みなグッドソングを作り出すバンド、GOMES THE HITMANのメンバーである山田稔明さんが提供した歌詞も、とても前向きな内容となっており、そうしたパワフルな言葉の数々が中島さんの明るい歌声によって"音楽"へと変換されていく様は、リスナーに言いようのない幸福感を与えてくれます。
『ワタシノセカイ』が力強さと切なさを同時に描き切ることで、中島さんの再スタートを彩った曲だとするならば、そのB面にあたる本曲は、溌剌としたメロディとリリックで、皆が待ち侘びた中島さんの帰還を祝う為に鳴り響いたファンファーレ。
バラード曲でシットリと聴かせた後に、この曲を置くレイアウトも秀逸で、アルバム本編へのジャストなフィット感も最高に気持ち良いです。
M9. Odyssey(作詞・作編曲:Avec Avec)
エレクトロニカ的なサウンドに乗せて送るオシャレで洗練されたサウンド。抽象的で揺らぎのあるな低音やメロディに、優しい中島さんの歌声が渾然一体となり、一つの柔らかな音になっていくような"歌"と"バックトラック"との親和性の高さが耳に残ります。
穏やかで、とても柔和な曲で、けれども、細かいところにまで音の作りが行き届いている丁寧さもあり、まるで、高級なシルクのような上質な手触りが感じられます。
M10.サタデー・ナイト・クエスチョン(作詞:加藤慎一、作曲:山内総一郎、編曲:フジファブリック)
本アルバムに収録された3曲目の再録ナンバーである『サタデー・ナイト・クエスチョン』は、『ネト充のススメ』のオープニング主題歌として起用されたシングル曲。
人気バンド、フジファブリックによるプロデュースで、ダンサンブルなシンセフレーズと切れ味鋭いギターの音を主力とした"オルタナティヴ・ロック"を地で行く挑戦的なナンバーです。
センチメンタルな世界観を有したサウンドは、どこかアダルトで気怠げなムードがあり、中島さんの歌も"大人"な色気がタップリ。
10代で「ランカ・リー」というポップアイコンを得て、アニソン・声優界のシンデレラとしてデビューを果たし、その後、様々なコンポーザーやアレンジャーとの出会いを通して、シンガーとしての表現の幅を広げてきた中島さんの成熟した"歌"の魅力に痺れる1曲です。
"新たなる代表作"のラストを飾るのは、大団円的なハッピーエンド
M11.未来の記憶(作詞:甲斐みのり&Twisty、作編曲:CMJK)
『Odyssey』と共に、本作のテクノ成分を担う楽曲で、元電気グルーヴ、CutemenのCMJKが楽曲を提供。こちらも人選の妙が光っており、アニメ専門ではないテクノ系ミュージシャンを作編曲者に招いたことで、不思議な化学反応が生まれています。
収録曲の中でも、『Life’s The Party Time!!』とはまた別のニュアンスでメロディのアップダウンが激しい曲で、かなり凝った作りがなされています。
そのガッツのある電子音の大波に飲み込まれることなく、アーティストとしての個性をシッカリと発揮する中島さんの歌声は、素晴らしいとしか言いようがありません。
間奏パートでは、現代的な電子音楽を思わせるハードなダウンパートが導入されていますが、一方で、全編に渡って90年代的なアシッドハウスを連想させるムードもあり、シンプルに"テクノ"のトラックとしても聴き応えは十分。
中島さんと共著『音楽が教えてくれたこと』を出版した著作家の甲斐みのりさんが参加した歌詞にも注目です!
M12.愛を灯して(作詞:中島愛、作編曲:坂東邑真)
ラストを飾るのは、こちらも中島本人による作詞曲。アイリッシュ・トラッドのような哀愁とキャッチーさが入り混じるイントロに始まり、中島さんが高らかに"愛"と"歌"への賛辞を歌い上げる人生賛歌的な、とてもポジティヴで強い曲。
ストリングスの音もこの曲のドラマ性と、中島さんの歌を後押しし、とても感動的な歌世界を作り出しています。
曲の構成もJ-POPのマナーに則ったAメロからBメロ、そしてサビへと繋がる極々シンプルで余計な飾り気のないものですが、実際の進行よりもグッと音に奥行きと深さを感じられるのは、歌の素晴らしさとドラマティックな装飾音が作り出すスケール感故だと思います。
ちょっとダークな『サブマリーン』で幕を開け、この『愛を灯して』によってハッピーエンドで幕が閉じる。そんな構成の巧さにも驚かされますし、中島さんのディスコグラフィーにおいて今後も輝き続けるだろう"名盤"のラストナンバーに相応しい楽曲となっています。
沢山のアニソンや声ソンを聴いていると、心を震わせてくれるような……或いは、思わず涙が込み上げるような楽曲に出会うことがあります。
今回の中島さんのニューアルバムも、まさに、そうした作品の一つだったのですが、この作品に関しては、自身の感情を感動で満たす以上に、「より多くの人に聴いて欲しい、届いて欲しい!」という衝動を感じました。
それは、きっとこの『Curiosity』は、とてもとても良くできたポップスのアルバムで、誰しもの心に訴えかけるパワーがあると確信できたからこそなのだと思います。
"シンガー"中島愛の新たなる代表作となるであろう『Curiosity』。是非とも、その豊かな音世界を体験してみてください。
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