様々な話題作と良作が揃い踏みし、大充実の布陣となった2018年の冬アニメ。
いずれの作品もクライマックスに向けて、更に、その魅力を増していますが、数ある"おもしろい"冬アニメの中でも、筆者が特にイチオシしたい作品が、いしづかあつこさんの監督作『宇宙よりも遠い場所』です。
「女子高生たちが南極を目指す」というスケールの大きなストーリーや、"砕氷艦"「しらせ」をバックにした主人公たちの姿が描かれたキービジュアルで、アニメの放映前から話題を集めていた本作。
いざ、放送が始まってみれば、その注目度の高さに違わぬ……いや、高まっていた期待値を遥かに上回るドラマを各エピソード毎に展開し、ファンの評価もドラマの盛り上がりと同様に上昇し続けています。
果たして、『宇宙よりも遠い場所』は、どうしてここまで観る者の心を揺さぶるのか? その魅力に迫ります!
魅力的なキャラクターが揃った『宇宙よりも遠い場所』
『宇宙よりも遠い場所』における大きな魅力のひとつとなっているのが、そのキャラクター描写です。
本作の主役となるのは、玉木マリ(あだ名は「キマリ」)、小淵沢報瀬(こぶちざわしらせ)、三宅日向、白石結月の4人の女子高生たち。
「自分を変えたい、何か新しいことを始めたい」と心の底から願いつつも、なかなか最初の一歩が踏み出せなかったキマリ。
民間の観測隊員だった母親が南極で行方不明となったことで、周囲に変人扱いをされつつも、南極へ行くことを目指し続けてきた報瀬。
物語は、この2人が偶然、出会ったことから幕を開け、そこに日向と結月が加わり、「南極上陸」という4人の途方もない夢に向かってストーリーが動き始めます。
現役の女子高生である彼女たちは、若さの輝きに満ちていて、とても眩しく、一方で年齢相応の繊細な内面も併せ持つ少女たち。
どの娘もポジティブな部分とネガティブな部分が内面に同居した、とても生々しくて、良い意味で、とことん人間臭いキャラクター造形がされています。
とにかく、ひたむきで全力な少女たちの姿が素晴らしい!
この人物描写が先ず絶妙で、かしましく動き回る彼女たちを活き活きと描くストーリーは、コミカルなシーンではとことん笑えて、シリアスなシーンでは、ガツンとエモーションが胸に響くドラマティックな起伏を物語に生み出しています。
明るく楽しく、真っ直ぐに10代特有の若さを謳歌しているかと思えば、時には傷つき、悩んだり、泣いたり、お互いに衝突をすることだってある。
キマリたちは行動も感情もひたむきに全力で、全力だからこそ、途方もない「南極」という目標が少しずつ、少しずつ、でも確実に目の前に近付いてくるのです。
そうした少女たちの姿は、私たちの心を打ち、キャラクターへの感情移入と物語への没入を呼び込みます。
また、吉松孝博さんによるキャラクターデザインや、彼女たちに魂を吹き込む声優陣の演技も素晴らしい。水瀬いのりさん、花澤香菜さん、井口裕香さん、早見沙織さんという主役を演じる4人のやり取りは、とても楽しく、また彼女たちを支える周囲の"大人"たちも実力派のキャストがそろい踏みしており、その安定感は抜群です。
魅力的なキャラクターに加えて、キャスティングも凄く"ハマっている"作品だと、本作を観る度に強く思います。