1万人が大阪城ホールに集い、ベートーヴェンの「第九」を合唱する『サントリー1万人の第九』。1983年に始まった年末恒例のコンサートが、41回目の開催。昨年は約2000人の合唱団を迎え、投稿動画や中継合唱を含めて、のべ12167人が参加した。そして今年、2019年以来4年ぶりに生の"1万人の第九合唱団"が復活する。コロナ規制が緩んだ今、専門家のアドバイスを下に開催を決定、合唱団員も募集中だ。25年連続で総監督・指揮を務める佐渡裕が『サントリー1万人の第九』に賭ける思いを、その出会いから語った。

「『1万人の第九』を指揮して四半世紀が経ちます。一回だけ!と約束して引き受けたのですが、そこには僕の想像をはるかに超えた"人のちから"がありました。人間って捨てたもんじゃない、と。『第九』の参加者はプロではないけど、一人一人、それぞれのいろんな人生を背負って今がある。魚屋さんの歌があり、主婦の歌がある。それが1万人集まるから素敵なんです。僕はそこに、皆さんがイメージするような、かしこまって聴くクラシック音楽とは違う、音楽の可能性とおもしろさを感じました」。

30代後半、ヨーロッパでの活躍が始まった頃の佐渡の思いに火が付いた。指揮台で受ける1万人の大合唱の力。それは「すごいエネルギーですよ。初めて指揮をした時は1回で体重が3キロ落ちました。僕が少しでもブレると、そのブレが1万倍になって揺り戻される。僕もそれなりの覚悟を持って指揮台に立ちます。コロナ禍ではそれが体感できませんでしたが、目の前の空気が震えて作る1度きりの音楽に、1回目と同じ気持ちで臨みたいと思います」。

今年のテーマは"ブラボーの復活"。「ブラボーって、演奏が終わったあとに、それまでのすべての時間をたたえ合う言葉。その場で作る音楽だけでなく、コロナで人と会えなかった時間なども含めて、何とか乗り越えて来たよね、皆でまた次に向かおうね、というエネルギーになってほしいと思い、テーマとしました。4年ぶりの大阪城ホールを今年は新生一万人で熱狂させて、それぞれが自分史上最大と自信を持って言えるぐらいの『第九』にしたいです」。

一緒に歌ってみたい人へ。「『一万人の第九』の感動の90%ぐらいは、実は練習する、その道のりにあると思っています。親子や夫婦でレッスンに通ったり、同じクラスの人と音楽を通して友達になれるのも醍醐味です。もうひとつは、講師の人たちがユニーク! 知らない国の言葉、知らない国の音楽を、頑張って是非習得してください。さぁ、一緒にブラボーに向かいましょう!」。

取材・文:高橋晴代

『サントリー1万人の第九』
日程:2023年12月3日(日) 午後3時開演(午後2時開場)
会場:大阪城ホール

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応募条件・詳しいスケジュールは https://www.mbs.jp/daiku/