山口祐一郎 (C)エンタメOVO

 山口祐一郎と浦井健治、大塚千弘、保坂知寿が出演する舞台「家族モドキ」が7月26日から上演される。本作は、NHK大河ドラマ「篤姫」「江~姫たちの戦国~」等多数の脚本を手掛ける田渕久美子と、ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」「ローマの休日」など幅広い作品で演出を務める山田和也がタッグを組んで送る家族の物語。大学教授の高梨次郎を演じる山口祐一郎に、本作への意気込みや“家族”にまつわるエピソードを聞いた。

 田渕さんと山田さんの3年ぶりのタッグ作品となります。改めて、出演が決まったときの心境を教えてください。

 良かったな、幸せだな。こんな作品がまたできるんだ、というのが率直な思いです。それと同時に、皆さんコロナ禍の3年間で、さまざまなことを経験して、大変だった方もたくさんいらっしゃる中で「家族モドキ」というタイトルの作品に出演できることをとてもうれしく思います。劇場で、また皆さんと一緒に“ファミリー”となって、この大変な2023年、そしてその先も、お互い元気に頑張っていきましょうと。そういう機会をいただけることが幸せです。

-浦井さん、保坂さんとは2020年に上演された「オトコ・フタリ」に続いての共演ですね。

 そうですね。浦井さんとは20年以上、保坂さんとは40年以上もさまざまな作品でご一緒しているので、とてもありがたいです。人生の時間を共有した人たちと一緒に芝居を作れる機会を持てるということはなかなかあることではないので、本当に幸運なことだと思います。

-二人のどんなところに魅力を感じていますか。

 俳優としての魅力という意味では、その作品に、リミットなしで自分の時間とエネルギーを奉仕することができる方たちであるというところです。ノウハウを自分自身で確立なさっていらっしゃるので、それを間近に見ると、素直に「参った」と思います(笑)。それと同時に、遅ればせながら、私もご一緒させていただくために頑張らなくてはいけないと再確認できる。そういう方々です。

-今回はそこに大塚さんも参加されます。

 初めて共演させていただいてから20年ほど経っていると思いますが、大塚さんがどんどん変化していくのを間近で見てすばらしいと思っています。僕は、大塚さんのお父さまと同じ年なんですよ。ですから、 “劇場の父”としてお互いに心を開いてお仕事していけたらと思います。先ほどお話しした保坂さんも浦井さんも若い頃からご一緒してきたということを考えると、そうした方たちとご一緒する本作は、「家族モドキ」というタイトルそのままだなと思います。

-本作は、“現代における家族の形”を描いている作品ですが、脚本を読んでどんなことを感じましたか。

 このコロナ禍では、家族の元に帰りたくても帰れなかった人が本当にたくさんいたと思います。さらに最近では主権国家同士が争うということも世界では起こっていて、どうなってしまうんだろうという不安感が強くなっていました。そんな中でやはり“家族”の大切さは浮き彫りになったと思います。今、やっと特別な規制もなくなり、離れて暮らす家族とも会えるようになりました。まさに今の時期にぴったりな作品ですよね。(脚本の)田渕さんが天才なのは知っていましたが、この作品を読ませていただき、タイトルを見てなるほどなと。面白いタイトルをつけると改めて思いました。

-山口さんにとっての家族とはどういった存在ですか。

 日本には、家族とはこういうものだという“家制度”というものがあって、それが半ば強制的に続いてきたのに、70年前に突然、変わりました。“家族”ではなく“個人”になったんです。それはシステムとして強制的に変わったものだったので、人の心と結びついて体感できる家族ではなくなっていたと思います。それでも、理想の家族というものは新たに作られて、父親、母親、子どもという形を社会で保護し、なおかつ、そうした形がもっとも効果的であり理想的だと考えるようになったわけです。ところが、僕がスタートした66年前、僕の場合は全くそれと違う形になってしまいました。僕の家族は、ファイブダディズ、ファイブマミーズなんですよ。(5人の父親と5人の母親がいる)なので、最初から社会通念上の理想形である家族とは全くかけ離れた“家族モドキ”だったんです。そうした“家族モドキ”のなかで生活してきたので、理想的な家族というものは自分の若い頃にはないものでした。こんな話をするとみんなジョークだと思うみたいですが、僕にとっての家族とはファイブダディズ、ファイブマミーズなんです。

-改めて、本作の見どころを教えてください。

 コロナ禍、それぞれのフィールドで抱えていたものを吹き飛ばすような、魅力的でチャーミングで楽しい、そして皆さんとほっこり暖かくなれる作品です。ぜひ劇場にいらしていただいて、皆さん元気になってください。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 「家族モドキ」は、7月26日~8月13日に都内・シアタークリエほか、大阪、愛知で上演。