「今の彼女ですが、まだ付き合う前の友達関係だった頃、土曜日の午後に小説を届けに部屋まで行ったことがあります。

彼女が『読みたいけど買いに行く時間がない』と言っていた作品で、個人事業主で家で仕事をする彼女には外出の機会も難しいだろうなと思い、僕が購入して届けました。

その頃は俺の片思いだと思っていて、下心があると思われるのが怖くてあえて近くまで来たときに電話をして、『買い物のついでに届けにきた』と何でもないふうを装ったのを覚えています。

あと3分くらいで着くというタイミングで、『駐車場まで降りる』と彼女が言うのを『玄関まで行くからいいよ』と止めたのは本当にただの好意でしたが、いま思えばいきなり家に来られるのも慌てただろうなと反省します。

息を整えてインターホンを鳴らしたら、すぐに出てきた彼女はすっぴんに普段着、『こんな格好で本当にごめん』と何度も言いながら目を合わせようとしない姿に心底かわいいと思いましたね。

普段は外で会うし服にも気を使っている彼女で、部屋ではどんな状態かなんて、そのときまで想像することもなくて。

いきなり連絡が来たから身なりを整える余裕がなかったのだなと思い、『急に来てごめん!』と俺も何度も謝りました。

俺からすればレアな姿だけど、彼女にとっては迷惑かもしれず、今さらのように怖かったです。

本を渡してすぐに離れ、帰宅してからまた謝罪のメッセージをLINEで送ったら『わざわざ届けてくれてありがとう。こちらこそダサくてごめんね。今度お礼にランチをおごるね』と返信がきて、思わず『かわいかったよ』と送信してしまい。

そのときは彼女から返信はなくやり取りはそれきりだったのですが、後になって『うれしかった』と聞きました。

素の姿だからこそかわいいと俺は思うけれど、女性にとっては『悪いギャップになる不安』のほうが大きいのも後で聞いて、まったく違うのだなと実感しましたね」(25歳/接客業)

女性にとっては、何の心の準備もできないまま急に部屋に尋ねてこられるのは、戸惑うし迷惑と感じることもあるかもしれません。

それを受け入れるのは男性が自分にとって近い存在の人だからで、「素の姿」をさらせるのも信頼の証ではないでしょうか。

恥ずかしさを隠せない姿が男性にとってはかわいらしく、「レア感」を強調させます。

こんな瞬間も、ふたりの好意を育てる手助けになるのですね。