自分たちがトップになれる新しいピラミッドを作りたい。
――ひとつのバンドとして、同じ場所に向かって作り上げていくことが大切ということですね。これまでリリースした作品に対して、反響はどうですか?
顚仙:リリースする度に何かしらの反応がもらえるので、新しく聴いてくれる人が増えてるんだなっていうのは体感してます。ライブに来てくれる人よりも、まずは曲を聴いてくれている人が圧倒的に多いかな。
吉一九兵衛:再生数を見てるとめちゃくちゃ実感します。他のバンドの数字はわからないから比較はできないですけど、前年比で見ると数字は倍以上に増えてますね。だからこのまま続けていって、聴いてくれる人も自然と増えて、ライブの動員は後からついてくればいいなと。
守護霊:毎回iTunes内のランキングは上がってるし、『XQC』はオルタナティブアルバムランキングにチャートインして、最高85位までいきました。その結果を見ると、ちゃんと聴いてくれてるし、伝えたいことも伝わって追いついてくれてるんだなって思います。
今もこれからも自分たちがやりたいことを表現していきたい。ファンが僕らに望んでくれていることは僕らがやりたいことをやりきっていることだと思っています。
吉一九兵衛:よくメッセージとか手紙で、「この曲が良かったです」とか「この曲を聴いてライブに来ようと思いました」っていう声をもらうんですよね。そういう意味では、バンド側の思っていることがお客さんにも伝わって動いてくれてるのかなって。
顚仙:曲に関しては、普段化粧しているバンドを聴かないような人も含めて、誰が聴いてもかっこいいって思ってもらえるような仕上がりを目指してるから、網を広くバッと投げてる感覚なんですよね。色んな人に見つけてもらうという意味でも、目下の戦いはチャートですね。
――今後、ベストアルバムもリリースする予定だと、以前ライブで告知していましたね。
顚仙:そうですね。アレンジもレコーディングもやりなおそうと思って、今ちょっとずつ準備してます。最近の曲は入れなくてもいいんですけど、少し古い曲とかは、「もっとこういうアレンジできたよな」と思ったりするし、仕上げる能力も当時より上がっていると思うので。
吉一九兵衛:ちょうど活動3周年っていう記念もあるしね。
――ベストアルバムを出すタイミングも早いですよね。
顚仙:早いですかね? 10年くらいやってからの方がいいですか?(笑)。
――いえ、すごい速度で進化してる証拠なのかなと思います。
顚仙:振り返ってみると、最初の方は邦ロックっぽい雰囲気で、そのあとプログレやヒップホップでいうトラックのような曲が入りだしたりして……って感じなので音楽性は結構変わってますね。あと、意外と季節ものを大事にしてるんですよね。リリースする時期の春夏秋冬が入るようにしたり。
守護霊:サザンとかGLAYとかラルクとか、著名なアーティストって大体季節ものの名曲を出してるじゃないですか。季節と音楽って密接な繋がりがあると思うんで、僕らもやりたいなって(笑)。
顚仙:温度とか空気感が変わったら聴く音楽もちょっと変わりません? 「うわ、これ冬の乾いた感じの中で聴いてたらエモいだろうな~」と思うこともあるし。
吉一九兵衛:冬の「Forever Love」はめっちゃ綺麗に聴こえますよ!
顚仙:冬はエルレもいいよ(笑)。まぁわかりやすいテーマというか制約が一個ある状態で作るのって、挑戦っぽくて面白いんですよね。
――先ほどライブよりも音源制作に重きを置いているというお話がありましたが、そういった活動方針は、ヴィジュアル系の若手バンドの中では珍しい印象です。
顚仙:最初は俺たちこそがヴィジュアル系だと思ってやってたんですけど、「ヴィジュアル系っぽくない」とかなんだかんだ言われ、世の中にはもう「これがヴィジュアル系だ!」って概念が出来上がってるんだなって気づいて。
そこからまた色々調べたりしてよくよく考えたら、そもそもヴィジュアル系って周りから勝手に呼ばれるものじゃないですか。「ヴィジュアル系バンドです」って名乗ると永遠にその門下生になっちゃって、新しい流派にはなれなくないですか? だったら俺たちは自分たちがトップになれる新しいピラミッドを作りたい。
……みたいなことを俺たちは日常的にずっとディベートしてるんですよね。なんか暇があったら話し合って、お互いに自分でも考えて、そこで辿り着いたキーワードが“アンステレオタイプ”でした。
守護霊:僕たち、自分たちなりのやり方が他にないかなって常に探してるんです。原点とか理念を考えるというか。何のために音楽を作ってるのかとか、どういう気持ちの良いやり方でファンに届けられるかとか。
そういうことにひとつひとつ向き合って掘り下げて俯瞰して素直に考えると、気持ち悪さとか矛盾がなくなって、最終的にみんなが気持ちよくいられるんじゃないかなって思うので。
――吉さんはどうですか?
吉一九兵衛:僕はあんまり考えてないんですよね(笑)。フィーリングで動くタイプだし、バーッと喋るときもあるけど自分のバンドに対する最終的な考えはあまり言葉に残らないので。今は対等に立ってるつもりですけど、最初は後から入ってきた自覚が結構あったんで、直感でふたりに合わせたり、俯瞰で見てバランスとるようにしたりしてます。
――同じような価値観で活動している同世代のバンドはいますか?
守護霊:いないからワンマンばっかりやってるんだよね(笑)。
吉一九兵衛:出会ったことないね。
守護霊:僕らもただ逆張りしてるわけじゃなくて、一応理論的にやってるので、わかってくれる人はいつかわかってくれるだろうし、まずは自分たちがやりたいことを着実に表現していきたいです。気が合うメンバーと!
吉一九兵衛:ってなると友達同士が一番いいんだよね(笑)。
――良い関係性ですね。自分たちがやりたいことを貫くにあたって、今の時代に、やりやすさややりにくさを感じることはありますか?
顚仙:発信すること自体はやりやすいと思いますよ。リリースの手続きとかも自分たちだけでパッケージングできるし、ボタンひとつで終わりですからね。ただ、この情報量が多い中でリーチをかけるのは難しいかもしれないですけど。
守護霊:僕的には全部やりやすいですけどね。
顚仙:本当にのびのびやってますね。
吉一九兵衛:猫みたいなバンドです(笑)。