可能性は無限大!? 未来の図書館が担う役割をカーリルが橋渡しをする
――続いて、カーリルの展望について、お伺いしてもよろしいでしょうか。現在、考えておられるカーリルの可能性、ビジョンがありましたら、ぜひ教えていただけますか?
吉本さん「たくさんの人に使ってもらうのは、もちろんなんですが。そもそも図書館ってサービス自体があまり知られていないんですよ。使っているのは一部の人だけなので、図書館がもっと使えるようになっていかないと、カーリルも伸びていかないっていうところがあってですね。
具体的には、“図書館が次になにをやっていくのか”を一緒に作っていきたいなと。というのも本の検索がこれだけできるのは、ある意味カーリルが図書館員の仕事を奪っていると思うんです。例えば『この本ないですか?』といわれて、『じゃあ隣の図書館にあるから取り寄せましょう』というのが司書の仕事のひとつで。
『その奪った時間でなにか新しいことやろうよ』と、図書館の人とはずっとしています。図書館の本を整備して探しやすくするのが図書館の人の持っているノウハウだとすれば、それを今後どうやってインターネットに展開していくのか。一緒にやっていけたら面白いなと思いますね」
――なるほど。カーリルは蔵書情報、貸し出し状況、Amazon等の書誌データベースをメイン機能としているだけに、未来の図書館が担う役割にも一役買っているということですね。そのために、なにか計画しているプロジェクト等はあるのでしょうか?
カーリルと図書館のニーズを高めるために、図書館に本当に置くべき本とは
吉本さん「これはWebサービスではないんですが、図書館の買う本をもっと面白くできないか?という取り組みを始めています。図書館って出版されている本を選んで買っているんですが、最近は図書館員の数が減らされているので選んでいる余裕がないんですね。
要は書店の売り上げランキングに基づいて持ってくるだけなので、出版社からすると売れる本が図書館に並ぶから売れない。書店を使わなくても読みたい本は図書館で読めてしまう。となると、どの図書館も同じ本を持っているので、実はこの本を探そうって時にどこも持っていないことになる。
そういうところにカーリルのデータを生かせないかなと。例えば、いま初版が2000~3000部の本が増えていて、図書館が買っているのは500~1000冊ぐらい。そう考えると出版できる本は増えてくるはずで。出版したいけどなかなかできないところに、ちゃんと図書館が投資できる仕組みができたら面白いなと」
――とても興味深いです。図書館がそれだけ本を買うことで、出版する本も作りやすくなるということですね。この辺りは図書館が買う本のマッチングと、出版社が売りたい本のマッチングの話になってくるので、なかなか難しいとのことですが。
少なくともそういう仕組みができれば、本を出版したい人の声にも答えることができて、図書館員が選ぶ本も選別されてきそう。結果的に、図書館業界が盛り上がり、カーリルの利用者ニーズも高まりそうですね。