モンキー・パンチ原作『ルパン三世』の人気キャラクターを主役に描く実写映画『次元大介』が、10月13日からPrime Videoで配信される。ルパン三世の無二の相棒で早撃ちの天才ガンマン、次元大介。そんな次元大介が主役の本作では、過去の悲しい出来事から言葉を発することができなくなった少女オトと出会い、彼女を守ることになり、オトを狙う謎の組織や、片足と声を失ったミステリアスな元殺し屋のアデルと対峙(たいじ)することになる。実写映画『ルパン三世』(14)以来、今回再び同役に挑んだ玉山鉄二に話を聞いた。
-次元大介のような、アニメなどですでにビジュアルイメージのあるキャラクターを演じるのは難しいのではないですか。
やっぱり外見の部分とかでファンがお持ちになっているイメージがそれぞれあると思うので、そこに関していえば、映画版の時に、多分僕だけじゃなくて、(ルパン三世役をやった)小栗(旬)くんとかも、みんなすごく苦しんだ部分はあったと思います。でも、今回はそれを1度踏まえているので、そこに関しての苦しみみたいなものはなくて、いかに次元がストーリーの軸である時にどう成立させるか、どうお客さんをかき乱せるかみたいなことに比重を置きながら演じていました。
-最初に脚本を読んだ時の印象はどのような感じでしたか。
オトと次元とのヒューマンな触れ合いの中で、新たにどういう次元が出てくるのかなと思いました。でも、それは現場で確認しながら実際にやってみないと分からない部分だったので、僕自身もどういう次元が出てくるのかというのを楽しみにしながら、現場に行っていた感じです。
-では実際に演じてみていかがでしたか。
アクションも含めて、ヒューマンな部分もあって、みんなが楽しめるような作品にはなっていると思います。そこにプラスアルファとして、アデルの存在や、泥魚街のざらついた関係、あとは、やっぱりアニメシリーズでの「ルパン三世」の、トラディショナルな、昭和の香りみたいな部分がうまく出ていたので、セットなども含めてすごいなと思いました。
-世界一の銃職人・矢口千春を演じた大ベテランの草笛光子さんが大活躍でしたが、草笛さんとの共演についてどう思いましたか。
何度か共演させていただきましたが、やっぱり草笛さんには独特の空気感があって、独特の緩さとそれをぐっと閉める落差の表現がとてもお上手なので、 間近にいて、勉強させていただきました。ああいう俳優さんはもう少ないというか、貴重な方なので、ご一緒できたことが僕の中ではすごく心地いい時間でした。
-オトを演じた子役の真木ことかさんとの共演はいかがでした。
彼女は、すごく器用で、言われたことが何でもできるような感じの子。それにプラスアルファして、彼女自身がすごく悩んだり、その悩みと対峙し努力するタイプ。オトという役とすごく向き合っていて、泣くシーンなどでも、1回泣きのモードに振ってしまうと、次にスイッチが入るかすごく不安だと言って、そのシーンを撮り終えるまでは、ずっと泣いて過ごしていたので、すごい集中力だなと思いながら見ていました。
-泥魚街のボスで伝説の美しき元殺し屋・アデル役の真木よう子さんは?
真木さんとは、最後の対決シーンだけだったんですけど、真木さんの車いすでのアクションの引きはすさまじく強かったし、アクションの引きがある分、オトと次元のヒューマンな関係があって、最後にアデルに会いに行くというベースができていたので、そうした部分では、本当に力強い俳優さんというか、瞬発力がとんでもない俳優さんなんだなと改めて感じました。
-たばこ、銃、手帳といった小道具が非常に印象的でした。小道具の生かし方をどう考えましたか。
銃に限っていえば、扱い方の所作はガン担当の人と、どういう動かし方ができるのか、何ができて何をしてはいけないのかということを、いろいろと確認しながら、手さばきが次元っぽくスムーズにいくように、本番の合間にすごく練習しながらやっていた感じです。
-今回、改めて次元を演じるに当たって、気を付けたところや意識したところはありましたか。
特別何かというのはないですけど、前作の映画『ルパン三世』を演じた後で、まだご存命だった(原作者の)モンキー(・パンチ)先生から、「次元がすごく良かった」とおっしゃっていただけたので、それを自信にして、思い切って参加することができました。やっぱり、モンキー先生のお言葉というのは、僕の中ではものすごく重いものがあったので、すごく助けられました。
-子どもの頃に「ルパン三世」のアニメを見ていて、強い思い入れはあったのですか。
そうですね。子どもながらにエンディングの曲が何か暗いなとか、ちょっとアニメっぽくなかったみたいな思いを持ちつつ、そのまま大人になっていった感じです。だから、「ルパン」シリーズの空気感や題材などがああいう感じだったから、海外のファンや大人のファンがとても多かったんだと思います。あとは、IPもの(知的財産を使ったコンテンツ)を実写化するに当たって、今までもそういうものは幾つかやってきましたが、やっぱり、近づけるために何かを付け足す作業をたくさんしていくと、どこかミスっちゃうんです。だから、僕は、自分の中での役作りとして、自分という軸を置かずに、そぎ落とす作業で近づけていきます。
-完成作を見た感想と、観客に向けて一言お願いします。
何か自分が出ているのに感想を言うのもおこがましく感じますけど、昭和の空気やおじさんのアクション、僕の中ではそうした部分に心を踊らせながら見ることができました。観客の皆さんには、何の先入観もなく見ていただけたら、それなりに楽しんでいただける作品になっているんじゃないかと感じています。
(取材・文/田中雄二)