「大奥 Season2」(C)NHK

 NHKで好評放送中のドラマ10「大奥 Season2」。よしながふみの大ヒットコミックを原作に、謎の疫病“赤面疱瘡”によって男子が激減し、女たちが政治を行うことになった江戸時代を舞台に、大奥内の権力闘争と赤面疱瘡撲滅に挑む人々の姿を描いた群像劇だ。今年初めに放送されたSeason1の好評を受けてスタートしたSeason2は、「医療編」に続き、11月7日から幕末・大政奉還の物語を描く「幕末編」に突入。その中心的存在となるのが、老中・阿部正弘(瀧内公美)に見出されて大奥入りし、やがて総取締の座に就く瀧山だ。演じるのは、連続テレビ小説「エール」(20)で強い印象を残し、数々の舞台でも活躍する古川雄大。時代劇初挑戦となる撮影の舞台裏を語ってくれた。

-瀧山役のオファーを受けたときのお気持ちは?

 今まで時代劇の経験がなかったので、お話をいただいた時は驚きました。僕は舞台でも洋風の役を演じることが多く、「まげのように和風のものは似合わない」かもなと勝手に思い込んでいたこともあって。ただ、Season1をドラマファンとして拝見していたので、今作に出演できると聞いた時はとてもうれしかったです。瀧山も、忠義に厚く、人を思う気持ちを持つとても魅力的で愛される人物です。瀧山を演じる上で、もちろん、プレッシャーもありますが大きなチャンスなので精いっぱい頑張りたいと思いました。

-激動の時代、大奥内で出世していく瀧山に共感する部分はありますか。

 瀧山はとても優秀で、常に学問をしたいという思いを抱き、どんな状況でもその夢を諦めない志の高い人です。男女問わずいろんな人と出会っていくので、そこで培われたコミュニケーション能力にも秀でている。忠義に厚く、徹底的に守ろうとする部分がとても共感できます。

-初めての時代劇で、演じるに当たって苦労したことは?

 やっぱり、所作や言葉遣いは難しかったです。実は撮影に入る前、別の現場で(「三代将軍家光・万里小路有功編」で春日局を演じた)斉藤由貴さんとご一緒したんです。その時にお話を伺ったところ、入念に準備されたということだったので、僕もできる限りの準備をして現場に入りました。それでも、最初は何度かNGを出してしまって。言葉遣いと同時に所作を意識しつつ、感情も追いつくようにしないといけないので、普通のお芝居とは一手間も二手間も違うなと。だから、分からないことはスタッフの方や所作指導の先生に質問し、徹底的にご指導いただきました。

-たくさんの人物と関わっていく瀧山を演じるに当たって、現場で心掛けたことは?

 現場では皆さんとのコミュニケーションを大切にしました。といっても、役の話をするのではなく、皆さんとできるだけ日常会話を増やし、距離を縮めるようにして。中でも、瀧内さんは話がお上手で、コミュニケーションをとる中から演技を引き出していただきました。

-胤篤・天璋院役の福士蒼汰さんと一緒の場面も多いようですね。

 瀧山は胤篤と長い時間を一緒に過ごすことになるので、福士くんと会話する機会が一番多かったです。最初はお互い距離がありましたが、福士くんが現場を明るくする空気を作ってくれたおかげで、次第に距離も縮まっていって。僕と福士くんの関係が、瀧山と胤篤がバディとして一緒に成長していく過程にも生きたのではないかと思います。

-衣装やセットなどで、大奥の世界観を実感した出来事はありますか。

 セットも衣装も豪華で、メイクをした状態で初めて衣装を身に着けた時は、感動しました。瀧山の象徴でもある流水紋の裃も、とてもすてきに仕上がっていましたし。きれいな模様にするために、3回くらい作り直したと聞きましたが、そんなふうに細部までこだわり、愛情を持ってスタッフの皆さんが制作する過程も近くで見てきたので、すごく感謝の気持ちでいっぱいです。僕自身は自分が着ているので、まだ客観的には見られていませんが、劇中では流水紋を背負って決めゼリフを言っているので、オンエアが楽しみです。

-瀧山には、大奥入りする前、花魁として活躍する場面もありますね。

 花魁の所作は、「ここで女性的な表現をしたいな」というとき、所作指導の先生にポーズを考えていただき、一から一緒に作っていきました。僕はダンスの経験があるので、柔らかな表現をすることはそれほど苦ではなかったのですが、時代に合った表現をしなければいけないので、一つ一つ確認させていただきながら…。花魁姿は自分でも鏡で見てみましたが、似合っているのかどうか判断がつきません。ご覧になる皆さんがどんな感想を持たれるのか、期待と不安が半々です(笑)。

-本作では時代劇の形を借りてジェンダーの問題も描いていますが、その点についてはどんなことを感じましたか。

 現代とは比較にならないほど男女の格差が激しかった江戸時代を舞台に、ジェンダーの問題にスポットを当てた物語がとてもリアルに感じました。「男女の役割」という問題に一石を投じる、今の時代にふさわしい作品だと思います。

(井上健一)