「夫とは30年以上仮面夫婦状態で、私は客間を自分の部屋として使い、家のなかにふたりきりのときも会話することはありません。

ふたりの娘がいて就職して家を出るまでは三人で過ごすことが多く、夫は蚊帳の外でも気にならないくらい、父親としての存在感も薄かったと思います。

次女が県外の会社に就職が決まったとき、『お父さんとは離婚するの?』と尋ねてきましたが、『そのつもりはないよ』と答えていました。

理由は娘たちが結婚するまでは両親の揃った家庭でありたいからで、私の価値観が古いことは承知していますが片親になって娘たちに肩身の狭い思いをさせたくありませんでした。

こんな気持ちを娘たちに話すことはありませんでしたが、『ふたりが無事に嫁ぐまでは』と思えば夫との暮らしも何とか耐えられましたね。

数年前に次女も無事に結婚が決まり、やっと肩の荷が下りた思いがしましたが、次に湧いてきたのは孫のこと。

離婚すればどちらかが家を出ることになるけれど、すでにご両親が他界している夫は行き場がないためここに居座るだろうし、そうなると私がひとり暮らしになるので孫の世話をするのが大変かもしれない、と思いました。

一緒に暮らしてはいるけれど食事は別々で洗濯や掃除も自分でやっている私たちは、このままでも特段問題はないように思えて。

夫から切り出されない限りは夫婦のままでいようと思い、60歳を過ぎた今も仮面夫婦で暮らしています。