パッケージからしていかにも怪しいスマートウォッチ(筆者撮影)

本物のApple Watchの1/10以下で購入できる、こういったApple Watchの模倣品を代表する激安スマートウォッチですが、実は「使っているだけで違法」になる可能性や「期待していた機能がほとんど無意味」な可能性についてレポートします。

医療機器の認可なし!数値は参考にさえならない?

Apple Watchに見た目が、そっくりなスマートウォッチがECサイトで格安で販売されていて、いかにこのような「Apple Watchまがい」に手を出すことにリスクがあるかということについて前回の記事で紹介させていただきました。

<過去記事>

ネットで売っている「Apple Watchそっくり製品」が激安な理由(1)~使ったら違法?安易に手を出すことの危険性~

https://www.bcnretail.com/market/detail/20240122_395433.html

Apple Watchは厚生労働省の「家庭用心電計プログラム」及び「家庭用心拍数モニタプログラム」の適正使用に該当し、認可を受けています。つまり、心拍数の数値は医療レベルに相応するということです。

しかし、これに対してECサイトにある模倣品の商品紹介ページを見ると、「製品とその機能は医療機器として設計されておらず、いかなる疾患の予測、診断、予防、治癒を目的としたものではありません」とか、「本製品はスポーツ製品であり日常の健康管理および運動管理、医療機器ではない」などと書かれています。

しかし同じ商品ページには「歩数や移動距離、消費カロリーなどのアクティビティは終日記録できます。」とか、「100種運動モードで楽しくトレーニング」などと書かれています。

これらの表記を見て「このスマートウォッチが健康に関する指針を測定してくれる」と、“勘違い”してしまう人は少なくないでしょう。

医療機器かのように訴求している商品を使うリスク

医療機器ではない商品をあたかも効果・効能・医療精度があるかのように思わせる表現をすることは薬機法の68条に抵触する恐れがあります。<参照>厚生労働省|薬事法における広告規制=https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000059731.pdf

購入した消費者が、これらの商品をただ利用することに違法性はありませんが、例えば、このスマートウォッチをメルカリやヤフオクなどで中古販売する際に、「心拍数が測れる」「血中酸素が測れて役にたった」などと表記したり、あるいは購入したパッケージに書かれているものを販売した際に罪に問われる可能性があります。

SNSで「先週より心拍数が安定してきたことが、このスマートウォッチで判ってよかった!おすすめです」と書いてもアウトの恐れ

SNSでこういった効果・効能のエビデンスや承認を受けていない商品について紹介したり、ブログに書いたりすることも広告行為とみなされ罪に問われる可能性があります。

LINEなどで友人に、機能について触れて紹介することもアウトな可能性があるので要注意です。

認可を受けていない…つまり…数値には何の保証もない…

狂った時計と止まっている時計はどちらのほうが正しい時を刻むかというジョークがありますが、認可を受けていないということは、だれもその機能を保証していないということと同じです。

つまり1分間に60と出ている心拍数が正しいかどうか?が全く保証されていないということです。

いくらApple Watchの1/10以下の価格だとしても、時間が狂った時計にお金を払う価値がないように、正しいか判らない数値の測定器には数千円の価値もないと言えるでしょう。

本当は健康リスクがあっても気づくのが遅れる可能性も

機能が保証されていないということは、例えば不整脈があったり、心拍数に異常があっても、「正常である」と表示されてしまうことで健康被害に関わる可能性があるということです。

偽医療機器機能付きスマートウォッチに、どのように注意したらいい?

こういった医療機器ではないのに、まるで効果・効能・機能があるかのような商品に手を出さないための、いくつかの見極め方法をご紹介します。

心拍数・脈拍数・血中酸素など“測れる”という言葉をつかわず、言い切りで書かれている商品に注意

薬機法に少しでも抵触しないように「心拍数が“測れる”」という言葉を使わず「心拍数」などとだけ表記されている商品は要注意です。

信用できるストア・目利きのいるショップで購入

大手量販店や専門家、信頼できるバイヤーが販売するECストアやリアル店舗で購入するようにしましょう。

医療機器として、これらのスマートウォッチを使うことに違法性はないと紹介しましたが、実は違う観点からは「使っているだけで違法になる可能性がある」ことを次回の記事で解説していきたいと思います。(ITジャーナリスト・レイ坂本)

レイ坂本

ITジャーナリスト。晋遊舎MONOQLO『クチコミ信者の銭失い』、週刊アスキー『ウイルスなんて死んじゃえばいいのに』、ラジオライフ『技適トラベラー』などのコラムを連載。