「楽天ふるさと納税」を2015年から運営している楽天グループ(以下、楽天)は、2024年6月28日に改正されたふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示に対する反対署名活動について、7月8日時点でオンライン署名の総数が100万件を超えたと発表した。楽天IDでログインして簡単に署名できる仕組みのため、記者も早々に署名したが、おそらく覆ることはないだろう。
総務省は携帯電話・スマートフォン(スマホ)の異なる事業者間の乗り換え活性化と端末販売の適正化のため、2016年2月以降、ガイドラインを定め、段階的に規制を強めてきたが、そのたびにスマホの駆け込み購入と反動減が発生してきた。なお、12月27日以降、セット割引の上限は税別4万円に引き上げられている。
今回のふるさと納税の改正は、一律禁止であり、スマホ販売のような抜け道はないため、改正後はふるさと納税による寄付は大幅に減少しそうだ。なお、楽天ではオンライン署名で集まった声をまとめ、撤回するよう政府、総務省に申し入れを行う予定。
事実上の「ふるさと納税」制度終了?
ここで改めて、ふるさと納税の仕組みを説明しよう。ふるさと納税は、「ふるさと納税サイト」などから所定の手続きに沿って地方自治体に寄付を行い、確定申告するか、ふるさとワンストップ特例の適用を受けることで、寄付金額に応じた返礼品がもらえるだけではなく、所得税の還付や住民税からの控除が受けられる制度。
6月28日に総務省が発表した「ふるさと納税の指定基準の見直し等」によると、今回の改定の狙いは、ふるさと納税の指定制度について、制度本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるようにするため。具体的には、25年10月1日以降、寄付に伴いポイントなどの付与を行う事業者(ふるさと納税サイト)を通じた募集を禁止する。また、返礼品などを強調した宣伝広告も禁止とする旨を明確化。あわせて、「区域内での工程が製造等ではなく製品の企画立案等であるもの」や「区域内で提供される宿泊等の役務」について、当該地方団体で生じた付加価値や、地域との関連性をより重視した形で基準を見直す。
なお、見直しの対象となる寄付に伴うポイントのうち、クレジットカードなどキャッシュレス決済サービスの利用に応じた通常の商取引と同じ水準のポイント付与は対象外。一方、ふるさと納税に関して追加的に付与するポイントや、いわゆるポイントサイトなどを経由してポータルサイトに遷移し寄付を行った際に当該寄付に伴って付与されるポイントは対象となるため禁止となる。
「反対署名のお願い」を展開する楽天は、「楽天ふるさと納税」で付与している楽天ポイントは、自社サービスのプロモーションのため自発的に企画・提供してきたものだと反論。民間原資のポイントまでも禁止する改正は、長年培った地方自治体と民間の協力、連携体制を否定するものであり、地方の活性化という政府の方針にも大きく矛盾するものだと主張している。
ふるさと納税は、確定申告で「寄附金控除」を受けて始めてお得となる(「ワンストップ特例制度」利用時は確定申告は不要)。ただ、23年10月の募集適正基準・地場産品基準改正までは、万が一、確定申告を忘れても、返礼品と寄付に伴って獲得したポイントだけでお得という状況だった。そこに今回、さらなる”改悪”の予告である。
単に「お得だから利用する」から「寄付先の自治体を支援したいから寄付する」へ、およそ1年後の25年10月から始まる新しいふるさと納税のルールに向けて、利用者はそれぞれ認識をアップデートしていく必要があるだろう。楽天ポイントをはじめとする、ポイント経済圏の争いにも大きくかかわりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)