【家電コンサルのお得な話・196】政府がこのほど発表した電気・ガス料金及び燃料油代に対する補助の実質的な継続は、一見すると国民の経済的負担を軽減しようとするものだが、その背後には問題が潜んでいる。齋藤健経済産業省大臣が記者会見で表明した、一時的かつ即効性のある救済措置の必要性は、短期的観点からは理解できるものの、中長期的な視点からはその効果や適切性に疑問符がつく。
「再開」以外の何ものでもない
齋藤大臣は「この夏の酷暑を乗り切ることを支援し、かつ即効性が高い対策として必要だという判断をしたものであり、再開ではない」と語っているが、国民から見れば再開以外の何ものでもない。
一度やめた判断が間違っていると判断されないよう、「酷暑乗り切り緊急支援」といったネーミングを考える暇があるなら、もっと本質に目を向けるべきだ。記者会見で示された政策は、国民を守るという名の下に、実際は政府が経済的な責任から目を逸らすための一時しのぎに過ぎない可能性がある。
例えば、電気・ガス料金の補助が特定の月に限定されていることは、その支援が持続可能なものではないことを示している。政府はこの夏の酷暑を前にして短期的な解決策に頼ることで、国民の目を現在の物価高やエネルギー危機から逸らそうとしているが、本質的な解決には至っていない。
物価高の抑制効果は限定的
さらに、補助金の支出は国家の財政にも大きな負担をかけることになる。税金を使って短期的に補助することは、諸外国への不透明な支出とともに、国の財政健全化に逆行する行為である。
政府が示した補助金額は単なる数字に過ぎず、それが国民の生活をどれだけ改善できるのかは未知数である。特に、円安が進行する中での物価高の抑制効果は限定的であり、それによるインフレ圧力の増大を懸念する声も少なくない。
政府は一時的な支援に頼るのではなく、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギー政策の抜本的な見直しといった本質的な問題解決に向けた政策を推進すべきである。
それには、教育や研究開発への投資拡大が不可欠であり、そうした基盤を強化することが、真の経済安定と国民の生活向上につながるのである。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。