現代人は忙しい。毎秒のように降り注ぐ情報の数々。次々に増える、やるべきタスク。容赦なく過ぎ去る貴重な時間。Amazon.co.jpで「時間管理」の本を検索すれば、6000冊以上の書籍がヒットするぐらい、世の中は、やるべきことと過ぎ去る時間の間で、なんとかやりくりすることに四苦八苦している。筆者も、そんな「時間管理術」すなわち「タイパ」を追い求め続ける一人。そこで、時間管理術として「ポモドーロテクニック」と、それを楽しく実践する筆者愛用のツールについて紹介する。
そもそもポモドーロテクニックって?
「時間を『管理』することなどできない」という偉い人もいるが、筆者は「叶わぬまでも一矢報いたい」との思いで、「あれはどうか、これならどうだ」と時間をやりくりする毎日。いろいろと試した中で、「これを使えばタイパが劇的に向上する!」と感じて、日々実践している時間管理術がポモドーロテクニックだ。
ポモドーロテクニックは、集中力を高めることで時間を効率的に使う方法の一つ。一言でいえば、仕事を30分単位で分割して、25分集中したら5分休み、それを繰り返すというものだ。
なお、「ポモドーロ」とはイタリア語でトマトのことで、このテクニックを開発したフランチェスコ・シリロという人がトマト型のキッチンタイマーを使っていたことから名づけられた。
あのトマト型のキッチンタイマーを25分にセットして仕事をし、「ジリリリリリッ」となったら5分にセットして休む。これを「1ポモドーロ」として、4ポモドーロ(2時間)やったら、30分ほどのリフレッシュタイムをとる。
とてもシンプルなメソッドだが、25分間というのが長すぎず短すぎずの絶妙な時間で、「それぐらいなら頑張れる」というのと、「ああ、もうちょっと時間が欲しい」というのがせめぎ合い、とても集中力が高まるのでタイパが向上するのだ。
このポモドーロテクニックは、世界中で多くの人に受け入れられ、このテクニックを実践するためのツールがたくさん開発されている。シリロ氏がポモドーロテクニックを開発したのは1980年代なので、タイマーもアナログなトマト型だったが、いまやデジタル全盛のご時世なので、「ポモドーロタイマー」というカテゴリで、パソコンソフト、スマホアプリ、多種多様なタイマー機器が販売されているのだ。
筆者はスマホアプリはもちろん、ガジェットも大好きなので、いろんなポモドーロタイマーを試している。いま定番で愛用しているものは、アプリが一つ、タイマーが二つだ。それぞれに良い点があるので一つ一つを紹介しよう。
スマホアプリ「Focus To-Do」
たかがタイマー、されどタイマー。「タイマーのアプリなんて、アップル純正の『時計』アプリがあるじゃない?」というのは、その通り。iPhoneには最初から時計アプリが用意されている。
その時計アプリには、世界都市の時刻をいくつでも表示できる世界時計、時刻をいくつでも指定できるアラーム、ラップタイムをいくつでも測れるストップウォッチに加えて、時間をいくつでも指定できるタイマー機能が搭載されている。なので、25分のタイマーと5分のタイマーを設定すれば、ポモドーロテクニックに、この時計アプリを使うこともできる。
iPhoneをスリープさせていても、ロック画面中にライブアクティビティとして残り時間が表示される。ポモドーロタイマーとして十分な機能を持っている。
ただし、自宅で使うのならば、だ。なぜなら、時計アプリのタイマー修了時のサウンドは、「消音」設定していようと、画面ロックしていようと、必ずスピーカーから音が出るようになっているからだ。
自宅であれば、この仕様はありがたいのだけれど、例えば静まり返ったオフィスや図書館などでは困るのである。やっかいなことに、iPhoneのボリュームを絞っても普通の音量でなってしまう。
そこで、いろいろなタイマーアプリを試してみた結果、静かな場所で使えるポモドーロタイマーアプリを見つけた。それが「Focus To-Do」だ。
Focus To-Doは、ポモドーロタイマーとタスク管理を合体させたようなアプリだが、シンプルなポモドーロタイマーとしても使いやすい。25分と5分の繰り返しという標準的なポモドーロテクニックであれば、無料で使える(アプリ内課金をすれば任意の時間も設定できる)。
標準のタイマー画面もなかなかステキだが、全画面表示にすればフリップクロックスタイルになって、より集中力が高まる。
iPhoneをスリープさせないとバッテリが心配、という問題もない。ロック画面にライブアクティビティとして残り時間が表示されるので、緊張感をもってタスクに集中できる。
さらに素晴らしいのは、ヘッドホンを接続していればiPhoneがロックされた状態でも、ヘッドホンにタイマーの終了音が再生されるのだ。静粛にしなければならない公共の場所でも、安心してポモドーロテクニックで作業に集中できる。
また、アプリ内課金をすれば、やるべきタスクを管理することもできるのでTo-Doアプリとしても使えるが、ポモドーロタイマーとして使うだけなら無料版で十分に役に立つので、今のところ無料版を使っている。
自宅でも外出先でも使えるスタイリッシュなポモドーロタイマー「TickTime」
元祖のポモドーロテクニックでは、トマト型のキッチンタイマーを使っていたのだが、その進化型キッチンタイマーともいえるのが「TickTime」だ。
TickTimeの魅力は、まずデザイン。シンプルな六角柱型の側面には3、5、10、15、25、30の数字が配されていて、上部に美しいカラー液晶がある。見るからに、先進性が感じられて、このタイマーを使うというだけでテンションが上がる。
使い方もすさまじくシンプルで、計測したい時間の数字を上にして、TickTimeを横に寝かせるだけ。これだけでカウントダウンがスタートする。横倒しにするとちょうど正面を向くカラー液晶に残り時間が出るのだが、ホワイト、グリーン、イエロー、オレンジ、レッドの5色の表示がとても未来的だ。
残り時間は液晶中心部の数字と、それを囲むように配置されているサークル上のドットで表現される。
時間を数値で把握するだけでなく、サークルドットで量的にも把握できるようになっているのだ。
ポモドーロタイマーとして使う場合は、「25」の面を上にしてワークタイム25分間に集中したあと、「25」の面の反対側が「5」の面になっているので、くるりと反対側を上にして倒すだけで、5分間の休憩モードに入れる。
タイマーの終了音はオーソドックスな「ピピピッ」というアラーム音だが、5段階の音量設定ができる。最小のボリューム音でも十分な大きさなので、ポモドーロテクニック中なら最小音量でOKだ。15分や30分のタイマーモードもあるので、これらは仮眠を撮る時にちょうどいい。その時には最大音量にしておくと寝過ごさないで済む。
オフィスや図書館、静かなカフェなど、音を出しずらい環境でも使えるように、消音モードとバイブレーションモードも搭載している。消音モードはタイマー修了時にTickTimeの側面の数字が点滅するだけなので静かだが、手元から離れたところに置いた場合は気付かない可能性が高い。
そんな場合はバイブレーションモードにしておけばいいが、このバイブレーション、かなり強力なのでテーブルの上などかたいところに置いておくと、かなりバイブレーションの音が響く。非常に静かな場所で使う場合は、コースターやハンカチなどの上に置いておくのがいいだろう。
TickTimeの底面にはマグネットが埋め込まれていて、冷蔵庫などに貼り付けることができるので、ポモドーロタイマーの元祖であるキッチンタイマーとしても使えるが、磁力はとても弱いので、ちょっと手などが当たると脱落する危険性がある。3分のモードはカップラーメン用なのかと思われる。
残り時間を量的に把握したい人におすすめ「ビジュアルバータイマー」
物理的なポモドーロタイマーとしてはTickTimeが完璧、と思って愛用している筆者ではあるが、2024年4月に発売されたキングジムのビジュアルバータイマーという製品にはハートを奪われて、即買いしてしまった。
ほぼ完璧と思われるTickTimeだが、弱点は二つある。
一つは値段だ。スタイリッシュで独創的な使用感が魅力ではあるのだが、タイマーに6490円(24年4月末時点でのAmazon.co.jp価格)というのは、なかなか手が出しにくい。筆者もTickTimeを購入するまで、「いらないよな、いやほしい、でも高い、しかしかっこいい……」とずいぶんと迷ったのだ。まあ、結局買ってしまったし、非常に満足しているので文句はないのだが、この値段は万人には勧めにくい。
もう一つは残り時間の量的な把握だ。サークルドットで残り時間をボリュームとしてみることはできるのだが、液晶画面が小さいので一目で把握できる、とはいい難い。さらに、本体を横に倒して使うという使用方法であるため、手元近くに置いていると液晶画面全体が見えにくい。
さらにさらに、ポモドーロタイマーとして使う場合は「25」の面を真上にするのだが、そうすると液晶表示は45度斜めになるので、これがサークルドットの残量を分かりにくくしているのだ。
そこで、新たに購入したのがキングジムのビジュアルバータイマーである。このタイマー、残り時間を数字と横長の棒グラフ的な液晶表示(ビジュアルバー)で把握できるようになっている。このバーがめちゃくちゃみやすいのだ。
ビジュアルバーのサイズは縦2cm×横8cmとかなり大きいので、少々離れたところに置いてもはっきりと見える。手元に置いても液晶面が少し斜めになっているのでとてもみやすい。また、TickTimeと違って、どのような置き方をしてもいいので、液晶面を上に向けてもOKだ。
残り時間を数字ではなく、ボリュームとして把握したい人に最適なポモドーロタイマー、それがビジュアルバータイマーなのだ。自由にタイマー時間を設定するモードと、二つ設定したタイマー時間を交互に繰り返すモードがある。
後者のモードで使うとポモドーロタイマーになる。この二つのタイマーのセットを何回繰り返すかも設定できるので、オリジナルのポモドーロテクニック通り4回にセットすると2時間の集中ワークとなる。
筆者の場合、2時間はしんどいので、3回リピートの90分で使っている。大学の講義時間と同じだ。
ビジュアルバータイマーは、自宅で使うアラームオンのモードと、静かな場所で使う消音モードが用意されているが、残念ながらバイブモードがないので、ワークに集中しすぎているとタイマーが終了したことに気付かない可能性はある。
なので、ビジュアルバーで残り時間をチラチラと確認しながら作業する、というのがこのタイマーの使い方として良いのではないか、と思っている。あるいは、自宅で作業する時はビジュアルバータイマー、外出時に静かなカフェで作業する時はTickTimeを持ち出す、という贅沢な使い方が良いかとも思っている。
どちらのタイマーも持ち出していなくて、外出時にポモドーロテクニックをやりたくなったら、iPhoneのFocus To-Doの出番というわけだ。
■質の高い人生を送ろう!
ポモドーロテクニックは、どのような場所や状況でも柔軟に適応可能で、タイパが激アガりする効果的な時間管理法だ。今回紹介したどのポモドーロタイマーを使っても、緊張感と集中力をもって作業ができる。ビジュアルバータイマーのように、作業時間をボリュームとして把握するツールを使えば、グングンと持ち時間が減っていくのを実感するので、時間の大切さがより身に染みわたる。
環境や作業に合ったポモドーロタイマーを使うことで、日々の作業効率が向上し、時間の価値を最大限に活用することが可能になる。仕事だけではなく、読書や運動など日々の生活のあらゆる面でポモドーロテクニックを取り入れれば、質の高い人生を送れるだろう。(3Dデザイナーズスクール https://3dschool.jp/ 学長・西脇 功)
西脇 功
3Dデザイナーズスクール(https://3dschool.jp/)学長。製薬会社勤務を経て、1987年にApple社のMacintoshに出会いコンピュータ業界へと転進。IT系企業数社でコンテンツマーケティング、広報・宣伝のプロとして活動。製品導入事例の執筆、オウンドメディアのWebサイト立ち上げからコンテンツ作成までを一人で担当。2020年独立し、合同会社「天使の時間」を設立。3DCGソフト活用のためのオンラインスクール運営や、Webメディアへの記事執筆を行っている。