ネットなどで出品されている“Apple Watchそっくり”のスマートウォッチ(右)、左が本物のApple Watch(筆者撮影)

Apple Watchに見た目がそっくりなスマートウォッチがネットでApple Watchの1/10以下の価格で販売されていますが、意外に知られていないのが、「使っているだけで」「使っている人」が罪に問われてしまうケースです。詳しく紹介していきましょう。

「使っている人」が罪に問われる

「Apple Watchそっくり製品」が抱えるコピー商品としての問題点や医療機器としての問題点について前回までの記事で紹介させていていただきました。

<過去記事>

ネットで売っている「Apple Watchそっくり製品」が激安な理由(1)~使ったら違法?安易に手を出すことの危険性~

https://www.bcnretail.com/market/detail/20240122_395433.html

ネットで売っている「Apple Watchそっくり製品」が激安な理由(2)~心拍数や健康数値 “あってる保証なし”フィットネスにも健康にも役立たないスマートウォッチ~

https://www.bcnretail.com/market/detail/20240126_396670.html

また、コピー品・模倣品としても偽医療機器としても「個人が使っている」ことには直接的な違法性はありませんが、その製品を販売や転売したり、SNSなどで紹介したりした際に罪に問われる可能性があると紹介してきました(もちろんだからと言って、購入したり、使い続けたりすることはおすすめしません。おすすめしない理由については過去記事をご覧ください)。

しかし、今回のケースは「使っているだけで」「使っている人」が罪に問われるということを紹介します。

Bluetoothを使っている機器は必ず「技適」が必要

「技適」という言葉をご存じでしょうか?総務省が管轄する電波利用のための規制です。電波は“有効”資源であり、限られた帯域をきちんと分け合って使わないと、他の電波と混線して届くべき電波が届かなかったり、不正に利用されたりする可能性があります。

アナログ電波の時代は技適の認可を受けていない強力な電波を発する違法無線が、家庭の電源をオン・オフするなどという事故もありました。電灯ならまだしも電気ストーブなどを勝手にオンにする可能性があるとしたら…いかに危険かが想像できるかと思います。

デジタル電波が一般的になり、今は、そこまでの心配はなくとも、強力な電磁波が人体にどのような危険をあたえるかはわかりませんし、不正な電波によって他の機器に影響を与える可能性もあります。

技適の申請にはお金がかかる

技適を申請するには申請費用がかかるだけではなく、申請に通るようにきちんと設計・仕様を管理しなければなりません。これには当然ながらコストがかかります。

技適申請されていないスマートウォッチ達

技適申請されている商品には技適マークというものがついています。製品そのものについていることが前提ですが、スマートウォッチのような小さな商品の場合、パッケージの箱やスマートウォッチの画面を起動した際の情報などに表示されていたりします。Bluetoothを使った機器で技適マークがついていない商品は「電波法違反」となります。

例えば、実際にネットで「Apple Watchそっくり製品」を購入してみたところ、ハードウェアにも箱、マニュアルにもどこにも技適マークはありませんでした。ブランド名である「Youboo」を総務省の技適登録ページで調べても出てきませんでした。

もうひとつ購入した別のスマートウォッチには技適マークがついていたのですが、ブランド名や販売メーカーからみても、このマークが「本当に正しい技適マーク」かの確認はできませんでした。

海外のFCC IDがついていたので、この番号をFCCのサイトで確認したところ登録メーカーが出てきました。そしてこのメーカーがこの番号で日本での技適を申請していることもわかりました。

しかし、この技適が本当にこの購入した機器と一致しているのか…?を個人で判断するのは至難の業です。最近は、偽物の技適マークをつけて出荷している海外メーカーもある可能性があるというのです…

使っただけで違法、250万円の罰金!?

技適マークがついていないBluetooth機器は「利用した人が」罪に問われます。電波法違反の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。

また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金の対象となります。

なぜ使ったら違法なのに販売している?

総務省は技適が必要な製品の販売をする際の技適マークの申請を、販売業者やメーカーに「努力義務」として促していますが、販売を差し止める権限を持っていません。なので販売する側は罪に問われないけれど、使った側は罪に問われるという構図になっているのです。

「Apple Watchそっくり製品」はつまり

~特許・意匠侵害の違法性

~医療機器の違法性

~電波法の違法性

のリスクがあります。

利用者も

~転売したとき

~SNSなどで公開したとき

そして技適マークがついていない場合

~使っているだけで

罪に問われる可能性さえあります。

怪しいと思ったら購入しない、使わない。これが身を守る手段として理解しておきましょう。(ITジャーナリスト・レイ坂本)

レイ坂本

ITジャーナリスト。晋遊舎MONOQLO『クチコミ信者の銭失い』、週刊アスキー『ウイルスなんて死んじゃえばいいのに』、ラジオライフ『技適トラベラー』などのコラムを連載。