熱しやすく冷めやすい“春の依頼者”

春先に増えてくる個人調査について、知っておいて欲しいことが2つあります。

まず1つめは、依頼の動機が弱いぶんだけ逆に「誰でも調査対象になり得る」ということです。

少なくとも筆者が見て来た中では、芸能人クラスの超美形な対象者は1人もいませんでした。ごく平均的な容姿か、それより少しだけ上か、または少し失礼な言い方ですがマニアックな感じの人も調査依頼のターゲットになっています。自分みたいな一般人がまさか調査されるはずない‥‥とは決して言えないのです。

自分にはもう交際相手がいるんだから余計なトラブルはごめんだという人は、あまり今の新生活シーズン、誰にでも必要以上に愛想よく振る舞わないほうがいいかもしれません。

そして2つめは、上の話にちょっと矛盾するかもしれませんが、もし自分が調査されていると何かの拍子にわかっても、それほど慌てる必要はないということです。この時期の依頼者は熱しやすく冷めやすい人が多く、深刻なトラブルにはあまり発展しません。これがシーズンを問わず年中やってくる「真性ストーカー気質」の人とは違うところです。

軽い気持ちで他人に興味を抱き、手軽にネットで調べて安い探偵社へ依頼する、そして報告だけ受けて満足してしまい、それ以上の行動は起こさない‥‥というパターンです。尾行が失敗しても、途中で異性と会っていた写真を見せただけで「ああ、やっぱり男がいたんですね。じゃあもう打ち切りでいいです」と諦めてしまう依頼者もいました。

また、調べられる側としてはありがたいことに、探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)が本格施行されてからは調査手法が制限され、以前のように個人情報を「わずかな情報から根掘り葉掘り調べる」のが難しくなっています。やろうと思えばできなくはありませんが、軽い気持ちで依頼してきたような調査で探偵側も大きなリスクは冒せません。その意味でも、今のシーズンの個人調査はそれほど怖くないのです。

新生活の春は「気軽に調査を依頼する人もいるので、人間関係には注意する」「自分が調査対象になってもリスクは大きくないと考え、その前提で対応をとる」。この2つを心の隅にとめ、これからの季節を楽しんでください。

どこで間違えたのか研究者の卵から探偵へクラスチェンジ後、足を洗った現在はライター稼業。いまだに尾行を気にして振り返る癖が抜けません。記事の守備範囲はネット、現実世界に関わらずちょっぴりアングラ系を好みます。