喫煙シーンは『ロング・グッドバイ』の方がカッコいい

もともと、この『MOZU』の原作は、今から28年前の1986年に刊行された逢坂剛の小説なので、原作内では普通にタバコは吸われている。しかも、ジャンルはハードボイルドなので、タバコは必須のアイテムといっていい。

それをドラマでも踏襲しているのだが、倉木に関しては妻が死んでからタバコをやめているという原作の設定を、ドラマでは娘が死んでからタバコをまた吸い始めたという設定に変えてまで喫煙シーンを増やしている。

ハードボイルドさを強調するためか、照明の効果を上げるためか、あるいはタバコを吸うことに何かオリジナルの意味を持たせるためか、ハッキリとは分からない。ただ、少なくとも序盤ではあまり良い方向に転がっているとは思えない。

同じハードボイルド作品で、NHKの『ロング・グッドバイ』でも喫煙シーンは多いが、こちらは世界観が確立されているので、浅野忠信がマッチで火をつけてタバコを吸う姿はカッコよく見える。どうしてもタバコがアイテムとして必要なら、『MOZU』でももう少しうまく演出して欲しかった気がする。

 

死者と話せる設定を十分に活かしている『BORDER』

一方、『MOZU』の真裏でテレ朝が放送しているのが、小栗旬が主演する『BORDER』。こちらも警察を舞台にしたドラマだが、小栗旬が演じる主人公の刑事・石川が、頭部に銃弾を受けたことをキッカケに、死者と会話する能力が生まれるという設定になっている。

放送前は、この設定が刑事ドラマにハマるかどうかが心配だった。刑事が殺された被害者と話ができてしまえば、犯人を聞き出すことは簡単なわけで、そこに捜査の面白みがでないのではないかという懸念もあった。

ところが、2話以降は、事件の全容を話さない自殺した犯人や、過去に自分が犯した事件の遺族に殺されたと思い込んでいる死者、まったく無関係なのに犯人の都合で殺されてしまったホームレスなど、主人公が会話をする相手の設定がいろいろで、飽きさせないストーリーになっている。

安いドラマでは、主人公の際立った能力を目立たせるために、まわりのリアクションを大げさにすることもよくあるが、このドラマに関してはそういうこともない。それぞれの登場人物がきちんと仕事をしている感じが出ていて、そのあたりも好印象につながっている。とくに波留が演じる特別検視官の比嘉は、検視官としてのリアリティーがあるかどうかは別にして、主人公との絡みが面白くなるようなキャラクターになっている。

あやしい情報屋や天才的なハッカー、盗聴を得意とする便利屋なども出てくるのだが、このあたりもエンタメ性を盛り上げる要素として十分に機能していると思う。主人公の石川は、頭にまだ銃弾が残っていて、その影響で死者と話せる能力が発現したらしいのだが、こうした裏社会の人物たちとも、頭に被弾したあとにコンタクトを取るようになった。とにかく、そういったさまざまな境界線(=BORDER)で揺れ動く主人公の姿を描いているのがこの作品なのだ。

結果、初回の視聴率は9.7%と2ケタを割る数字だったが、4話では12.0%まで上げ、『MOZU』を逆転する状況になっている。序盤を終えた段階では、数字的にも内容的にも、『BORDER』の方がやや優勢といったところだろうか。