想像力が豊かな子どもにだけ見える”空想の友だち”。「もし、大人になった今でも、彼らがそばであなたを見守ってくれているとしたら…」という発想から生まれた、母を亡くした13歳の孤独な少女ビー(ケイリー・フレミング)と、子どもにしか見えない不思議な存在であるブルーの物語『ブルー きみは大丈夫』が、6月14日から全国公開される。ライアン・レイノルズとジョン・クラシンスキー監督がタッグを組んだ本作で、ビーの声を吹き替えた稲垣来泉に話を聞いた。
-これまで声優を経験したことはあったそうですが、外国映画の吹き替えは今回が初めてですね。実際にやってみてどう感じましたか。
声を当てる相手がキャラクターではなくて人間だったので、キャラクターと同じ声の当て方でいいのかなと不安があったのですが、 監督が声の出し方などについていろいろとアドバイスをしてくださったので、自分で理解して飲み込んで、相談しながら演じることができました。
-実際に吹き替えをやってみて、苦労したことや楽しかったことがあれば。
表情や相手との位置関係などを声だけで表現しなければならなかったので、お芝居だと自然にできていたことができなくなって…感覚をつかむまでがとても難しかったです。終盤でビーが踊るシーンがあるのですが、その辺りの吹き替えは楽しく吹き替えすることができました。
-吹き替えは1人で? それとも誰かと一緒にやったのですか。
最初の2日間は私1人だったのですが、最終日にブルーの声を担当されている宮田(俊哉)さんと一緒に掛け合いをすることができました。
-1人でやるのと宮田さんと掛け合いをするのとでは大きく違いましたか。
全く違いました。1人の時は、多少タイミングがずれてしまっても、スピード感など後から調節できるのですが、2人の掛け合いの時は、相手のリアクションがあるのでタイミングをぴったりと合わせなければなりませんでした。生でご本人の声を聞きながらだと、気持ちの受け取り方が全く違ったので、すごく楽しかったです。
-宮田さんは、どういう感じの人でしたか。
とても優しくて温厚な方で、私に合わせていろいろなお話をしてくださいました。アニメが好きでたくさん見ているので、推しの声優さんのお話もしました。宮田さんは声の出し方や、声の当て方が本当にお上手で…、私もいろんなことを経験して、いつかは宮田さんのようになれたらいいな、できたらいいなと思いました。
-ビーの声を吹き替えながら、彼女のキャラクターについてはどう感じていましたか。
ビーが関わっていく“空想の友だち”や人間がキーになって、ビーの心が少しずつ開いていくので、前半と後半とではビーの気持ちが大きく変わっていると思いました。ビーは、子どもと大人の間にいるから、子どもとして見られることも、大人として見られることもあるけれど、その変化が成長する過程では大事なことで、それを乗り越えたらさらに強くなれるので、乗り越えてほしいと思いながら声を当てていました。ビーのことが大好きになりました。
-稲垣さんには、この映画のブルーたち“空想の友だち”のような、想像上の友達はいましたか。
小さい頃はいたと思います。アニメが大好きだったので、アニメを見ながら一緒に空想の戦隊グループを作って、エアマットの上で一緒に戦ったりしていました。
-では、“空想の友だち”のような存在には共感できたというか、よく分かるという感じでしたか。
そうですね。でも、ここまではっきりとした感じではなくて、劇中に出てくる透明の“空想の友だち”に近かったと思います。
-映画は好きですか。どんなタイプの映画を見ますか。
大好きです。感動系の作品も見ますし、恋愛物も見ます。この前は友達と一緒にスリリングな映画を見に行きました。アニメの劇場版もよく見ます。
-完成作を見てどんな印象でしたか。
“空想の友だち”たちがとてもチャーミングで、表情がころころと変わるのが愛くるしくて。お話が明るい方向に向かっていくにつれて、ビーの表情もどんどん明るくなっていく様子を見て、すごく背中を押されたというか、勇気づけられたり、癒やしをもらったりしました。
-この映画の声優についてはどう思いましたか。
話しながら座る時の声の出し方の変化に驚きました。座る時ってちょっと力むじゃないですか。その瞬間を話しながら声だけで表現されていたので、すごいなと思いました。そういう声の出し方があるのかと、とても勉強になりました。
-映画の見どころも含めて、これから映画を見る人に向けて一言お願いします。
“空想の友だち”たちの表情が豊かで、一つ一つの表情がかわいらしいので、彼らの表情と、前半と後半のビーの気持ちの変化に注目しながら見ると、さらに楽しんでいただけるのではないかと思います。私も勇気づけられたので、見る人にもそう感じていただけたらいいなと思います。
-今回、吹き替えの仕事をやってみて、今後も吹き替えや声優をやってみたいと思いましたか。
はい! その時はまたグレードアップした自分で声を当てられるようにしたいです。
(取材・文・写真/田中雄二)