テレビの普及率は99%以上に達し、保有率は1世帯あたり2台以上という統計結果となった時もあった。しかし現在、テレビの世帯普及率や保有数は減少している。少子化の影響もあり、今後増加に転じることは難しい。そうした中で、テレビメーカーは購入者のニーズを把握した新製品の開発。放送局は視聴者のニーズを汲み取り、ネットへの流出を食い止める努力が必要だ。
購入者層のニーズは?
最初に内閣府の消費動向調査を使い、薄型テレビの普及率推移を探る。同調査では二人以上の世帯と単身世帯、総世帯の3種類の集計が存在するが、今回は総世帯の集計値を使い、世帯主の年齢階級ごとに薄型テレビの普及率をグラフ化した。
2014年から24年まで、総世帯における薄型テレビの普及率は9割台前半を維持している。しかし、年齢階級別では明確な違いがあらわれる。世帯主40歳以上では、普及率がほぼ9割を超えるが、同30~39歳以下では21年に9割を下回り、24年には85.7%まで落ち込んでいる。更に同29歳以下の普及率では、23年に8割を切り、翌24年には77.9%まで低下している。世帯主の年齢が若ければ、テレビ普及率が低くなるという結果を示している。
テレビ市場における最近の主流は、大画面化や4K/8Kといった高画質化、放送波に加えネット接続可能な製品だ。普及率が高い中高年に向けた機能は、充実しているのだろうか。年齢を重ねると目や耳の老化が進む。こうした症状に対応した機能を搭載することが、テレビ購入者のニーズといえそうだ。一方、若年層に対するケアも必要だ。
視聴者のニーズは?
放送局は、普及率の年齢階級別と合致した番組を制作できているのだろうか。この問いに対する客観的な統計値は存在しない。しかし、ネット上に投稿された動画を繋ぎ合わせた番組や漫画原作のドラマが多く放送されているのが現状だ。また、4K/8Kに対応したテレビを所有する家庭が増えつつあるが、高精細の動画に適したコンテンツはあまりない。ニュースやバラエティーなどを4K/8Kで観たいと思う視聴者も存在するだろうが、限定的ではないだろうか。
テレビ離れをNHKの受信料を払いたくないという声に結び付ける論調もある。テレビ購入者や視聴者に対する様々なズレが、テレビの販売減や番組の視聴率低下に結びついているのではないだろうか。(BCN総研・森英二)