日本では晩婚化が進んでおり、2023年の平均初婚年齢は夫が31歳、妻が29歳にまで上昇しています。これに伴い、高齢出産も増加しており、2022年には40~44歳の女性が出産した子どもが4.5万人で、その年に生まれた子どもの約5%を占めています。

一方で、40~44歳の女性による中絶件数が約1.3万件に達していることも見逃せません。つまり、この年齢層で妊娠した女性の5人に1人が中絶を選んでいる計算です。

産みたいのに産めない女性たちにはどのような状況があるのでしょうか。例えば、未成年同士で親の反対により結婚できない場合、できちゃった婚を予定していたが途中で関係が破綻した場合、または相手が既婚者で結婚が望めない場合などが考えられます。

今回の相談者である美帆さん(仮名)は、これらの女性たちとは異なります。彼女は42歳で、夫(46歳)と結婚しており、世帯年収も900万円を超え経済的な不安はありません。しかし、今回妊娠したのは第三子であり計画的なものではなく、避妊をしなかった結果としての妊娠です。

筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっています。その経験から、「夫婦が子どもを授かった場合、当然のように出産するだろう」と決めつけていました。

しかし美帆さんは産もうかどうか悩んでいました。夫婦の子なので手術の同意書さえあれば中絶は可能です。一体彼女の身に何があったのでしょうか。

自由きままな夫と衝突する結婚生活

美帆さんは「私も主人も束縛が嫌いな性格。自由を尊重してほしいタイプ同士なので、結婚当初は上手くいくと思っていたんですが……」とため息をつきます。

例えば、家族で出かける時も美帆さんは待たされるのが嫌なので、出発時間をきちんと決めたいタイプ。一方、夫は縛られるのが嫌なので、出発の時間を押し付けられたくないし、そこそこの時間に出発すればいいと考えるタイプで、夫婦の間に喧嘩は耐えませんでした。

しかし、美帆さんは第三子を妊娠するまで離婚を考えたことはなかったそうです。

「まぁいいか」で避妊しなかった結果

美帆さんは夫に求められ、断って機嫌を悪くするのが嫌で義務的に応じていたといいます。しかしその日は夫が避妊せずに行為をし、美帆さんも「まぁ大丈夫だろう」と受け入れてしまいました。

その結果、2ヶ月間も生理が来ず、妊娠が発覚しました。しかし美帆さんはこの妊娠を夫に伝えられず、悩んだ末に中絶を選択しました。なぜなら、夫に対する嫌悪感が抑えきれなくなっていたからです。

夫は避妊しなかったことについて謝ることはなく、無関心な態度を取っていました。このような状況で、愛情のない両親のもとで子どもを育てることが第三子にとって幸せなのかと自問自答し、最終的に美帆さんは中絶を決断。美帆さんは夫の名前を代筆して同意書を提出し、手術を受けました。

その後、美帆さんは夫に対する愛情がなくなり、憎しみや恨みだけが残っていることに気づき、離婚を決意したのです。

不仲な夫婦なら避妊を慎重に考えるべき

夫婦間で避妊の有無を決めるのは難しい問題です。特に美帆さんのように40代で妊娠の可能性がある場合、避妊について慎重に判断すべきです。

術前、術後の負担や喪失感を背負うのは妻だけです。夫婦の仲に問題がある場合、妊娠の可能性を考慮して夫婦生活を見直す必要があるでしょう。

1980年生。国学院大学卒。行政書士・FP。離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、会員は6千人を突破。バナナマン設楽さんの「ノンストップ」、明石家さんまさんの「ホンマでっかTV」、EXITさん初MC「市民のミカタ」などに出演。「STORY」「AR」などファッション誌にも登場。著書は「婚活貧乏」など11冊。