人生100年時代と言われる現代、理想は「ピンピンコロリ」――死ぬまで元気に過ごし、最後は迷惑をかけずに逝くこと。しかし現実は「言うは易し、行うは難し」。病気や後遺症で心身に障害を抱え、誰かに介護を頼ることになるケースが多いのです。

厚生労働省の統計(2022年国民生活基礎調査)によると、介護者の23%が配偶者です。夫が倒れたら妻、妻が倒れたら夫が介護することが一般的ですが、問題となるのは「子の配偶者」、つまり息子の妻が介護を担うケースです。

優紀さん(仮名/43歳)は、義父の介護を夫から頼まれた一人です。夫から「オヤジの面倒をみてほしい」と言われ、断り切れず、義父の世話をすることになりました。

行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっている筆者が、今回はこの優紀さんが経験したケースについて紹介します。

義父の介護を押し付けられた妻の現実

優紀さん夫婦は結婚18年目。反発すると不機嫌になる夫に逆らうことができず、いつも「はい」と答える日々を過ごしていました。そんな中、義父が散歩中に倒れ、多発性脳梗塞の後遺症で介護が必要となりました。義父は県営住宅に住んでいましたが、収入は年金だけ。施設に入るお金もなく、結局、夫の申し出で義父を自宅に引き取ることになりました。

優紀さんは「義父とは結婚式にも呼ばなかったし、一度も会ったことがありませんでした」と語ります。そんな初対面の義父の介護を突然押し付けられるとは、思いもしなかったでしょう。

汚物まみれの布団、暴言連発…

優紀さんは毎朝、義父を風呂に入れるなどの介護をしていましたが、義父は「風呂なんて入らなくても死なねーよ!」と反抗的。毎晩、粗相をする義父に対して紙おむつを勧めても「馬鹿にするな!」と拒否され、結局、汚物まみれの布団をコインランドリーに運ぶ日々が続きました。

義父は現役時代は工場で働いており、無口で頑固な性格。優紀さんがどれだけ気を使っても「酒を買ってこい!」「タバコを持ってこい!」とわがまま放題でした。優紀さんは義父の暴言やわがままに加え、夫の給料から義父に毎月3万円を出していることも重荷でした。

家族の介護に疲れ、離婚を決意

「もうお父さんの面倒は見られません」と限界に達した優紀さんに対し、夫は「家族なら助け合うのは当然」と主張。30年近く親孝行をしてこなかった夫が、急に義父の介護に熱を入れ始めたのです。

しかし、優紀さんにとって義父は「他人」。一度も会ったことがない義父への情はありません。「親孝行をしたいのなら、主人が介護をすべきです」と訴える優紀さんは、夫との離婚を決意しました。

優紀さんのように、義父や義母の介護に追い込まれるケースは他人事ではありません。厚生労働省の統計では、夫婦のみの世帯で要介護者がいる割合は25%(2022年)。10年前の18%と比較すると増加しています。誰もがいつ介護の問題に直面してもおかしくない時代です。

このように、現代の介護問題は避けて通れない課題です。家族だからといって無条件に介護を押し付けるのではなく、支援制度の活用や家庭内での話し合いが重要です。

1980年生。国学院大学卒。行政書士・FP。離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、会員は6千人を突破。バナナマン設楽さんの「ノンストップ」、明石家さんまさんの「ホンマでっかTV」、EXITさん初MC「市民のミカタ」などに出演。「STORY」「AR」などファッション誌にも登場。著書は「婚活貧乏」など11冊。