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 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。裁判官となった主人公・寅子(伊藤沙莉)は、3年間の新潟勤務を終え、再び東京に異動。星航一(岡田将生)とも再婚し、物語は新たな局面を迎えた。そんな寅子の明律大学女子部の同期生で、ぶつかり合いながら関係を築いてきたのが、山田よねだ。悲願だった弁護士資格を取得し、今後ますますの活躍が期待されるよねを演じる土居志央梨が、役に対する思いや撮影の舞台裏を語ってくれた。


-第21週の最後、寅子と航一の結婚を祝うシーンで、明律大学の同窓生が久しぶりに勢ぞろいしましたね。


 あそこは、「お互い、ここまでよく生きてきたね」とねぎらい、祝福し、学生時代から始まったみんなの物語の一つの節目となるシーンでした。先輩方も含め、明律大学時代の仲間がそろう撮影は本当に久しぶりで、何カ月も会っていない方もいたので、ただただ懐かしく、うれしく、その状況を楽しみながら演じていました。でも、みんなで乾杯するとき、台本には「(よねはしない)」と書かれていて(苦笑)。「乾杯できないの!?」と思いながらも、うれしい気持ちをぐっとこらえて演じていました。おかげで、「みんな一生懸命に生きてきたんだな。私も頑張ろう!」と、その後の撮影に向けて力をもらいました。


-戦争を経てそれぞれが大変な苦労をして生きてきた後の再会ということで、すてきなシーンでした。


 ただ、あの場に轟(太一/戸塚純貴)以外の男性陣がいないのは、少し寂しかったですね。花岡(悟/岩田剛典)は亡くなっていますし、小橋(浩之/名村辰)と稲垣(雄二/松川尚瑠輝)は仕事が忙しかったんでしょうか?(笑)。でも、花岡の気持ちを背負って生きている轟がいたので、花岡のことも思い出し、感傷的な気持ちにもなりました。


-ところで、第20週ではよねが悲願の弁護士資格を取得しましたね。


 台本を読んだときももちろんうれしかったのですが、一番ぐっときたのは、第20週からの新しい衣装合わせをしたときです。スーツに弁護士バッジをつけてもらったら、何十年越しの夢がかなったようで、泣きそうなくらいうれしくて…。こんな気持ちになるんだなと、まるでよねと気持ちがリンクしたようでした。


-轟と一緒にやっている法律事務所の名前も、「轟法律事務所」から「山田轟法律事務所」に変わりました。


 あの名前は、じゃんけんでよねが勝って「山田」が先になったのですが、撮影の時は純貴くんと本気でじゃんけんをしました。でも実は、私が勝つまで、ということで始めたら、ずっと負けっぱなしで(苦笑)。結局、7回ぐらいやって、2人とも超白熱していました(笑)。


-よねと轟の関係をどんなふうに捉えていますか。


 一言で言えば「相棒」です。よねにとってかっこ悪いところを見せられる唯一の相手が轟です。よねは、トラちゃん(=寅子)にもそういうところは見せないように振る舞っているので。そういう意味では、安心できる存在です。終戦直後に再会したとき、よねから「一緒に弁護士事務所をやらないか」と轟を誘っていましたが、きっとよねも轟に救われたところがあるんでしょうね。


-轟との印象的なシーンは?


 第21週で轟がトラちゃんに、花岡への思いや現在の恋人の遠藤時雄(和田正人)さんとの関係を初めて打ち明けるシーンは、現場で見ていて本当に感動しました。轟の優しさや信念を感じましたし、今までにない表情を見ることができ、とても感動しました。


-よねの特徴である男装の印象についてお聞かせください。


 台本をいただく前に、男装姿の女性とお聞きして興味は湧いたのですが、私は今まで女性らしい役を演じることが多かったので、自分にできるのか、不安はありました。でも、台本を読んでみたら、つらい過去を乗り越え、弱い人たちの味方になろうと法律を学ぶよねのキャラクターがとても魅力的だったおかげで、距離がぐっと縮まって。そういう意味では、吉田(恵里香/脚本家)さんの書かれた台本の力が大きかったです。それと、髪を切ったことも。


-というと?


 最初の衣装合わせは髪を切る前で、ショートヘアのカツラでスーツの衣装合わせをしたんです。そうしたら、そのカツラがあまりにも似合っていなくて(笑)。でも、実際に髪を切ったら、すごくしっくりきました。今はスーツ姿の自分の方が見慣れている感じです。周囲からも、「かっこいい」、「似合っている」と言ってもらえるので、自信になっています。

-よねを演じるに当たって、どんな準備を?


 よねには力強い声が似合うと思ったので、最初は自宅で、1人でしゃべりながら声のトーンを探っていました。ただ、新潟編のときなど撮影が空いた期間があり、その後久しぶりに撮影に臨んだら、声のチューニングがうまくできず、悪魔のような低い声になってしまって(笑)。その時は監督や沙莉ちゃんに相談しながら修正していきました。スーツのポケットに手を入れるしぐさも、よねにとっては長年の習慣なので、取ってつけた感じでなく、慣れ親しんだものに見えるように心がけています。そのせいか、スカートをはく気にならず、現場にスカートで来たことが一度もないんです。多分、染み付いているんでしょうね。


-よねは寅子に対してきつく当たることが多いですが、どんなことを意識して演じていますか。


 トラちゃんに対するよねの「うるさい」、「うっとうしい」、「アホか!」という言葉は、読み解いてみると結局、よねがうれしいときや照れているとき、図星だと指摘されたときなどに出ているんです。つまり、よねの愛情表現なんですよね。学生時代から、よねが何度「うっとうしい」と言っても、トラちゃんが「よねさん、よねさん」と寄ってくるのも、2人が仲のいい証拠だと思っていましたし。だから、その時々のよねの焦りや動揺の具合を考えてお芝居しています。


-「虎に翼」という作品や山田よねという役は、土居さんの中でどんな位置づけになりましたか。


 このタイミングで「虎に翼」という作品に出合い、よねを演じられて、本当に良かったと思っています。私にとってとても大きな作品ですし、今後の人生において、思い出すたびに勇気をもらえる作品じゃないかなと。仕事をしていく上でも、常に心の中によねを住まわせておき、弱気になったときはよねの力を借りれば、頑張っていけるような気がしています。


-「このタイミング」というのは?


 20代の頃は、一生懸命頑張りたくてもどうしていいかわからなかったり、猪突(ちょとつ)猛進で視野が狭かったりする部分もあったと思うんです。もしその頃だったら、のめり込みすぎてわけがわからなくなり、よねを俯瞰(ふかん)して演じられなかったんじゃないかなと。でも、30代になって視野も広がり、いろんなことに興味が湧き、少しだけ余裕を持てるようになったタイミングでお話をいただいたおかげで、現場を楽しめているような気がして。そういう意味でも、すごくご縁を感じています。


-それでは最後に、今後の見どころと視聴者へのメッセージを。


 たくさんの応援をありがとうございます。今後は、法廷のシーンがたくさん出てくるので、リーガルドラマとしての「虎に翼」に注目していただければと思います。最後の1秒まで全員で力を合わせて頑張りますので、ぜひ最後まで楽しんでください。


(取材・文/井上健一)