『エイリアン:ロムルス』(9月6日公開)
人生の行き場を失った6人の若者たち(ケイリー・スピーニー、デビッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルセド、スパイク・ファーン、エイリーン・ウー)は、廃墟と化した宇宙ステーション「ロムルス」を発見し、一獲千金や希望を求めて探索を開始する。
しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、人間に寄生して異常な速さで進化する恐怖の生命体エイリアンだった。その血液は全ての物質を溶かすほど強力な酸性であるため、攻撃することはできない。逃げ場のない宇宙空間で、次々と襲いかかるエイリアンによって6人は極限状態に追い詰められていく。
リドリー・スコット監督による『エイリアン』(79)の“その後”を描いたSFサバイバルスリラー。今回はスコットが製作に回り、ウルグアイ出身のフェデ・アルバレスが監督した。
この映画は、基本的にはオリジナルを踏襲したかのような宇宙ステーションを舞台にした密室劇だが、宇宙飛行士ではなく、素人の若者たちとエイリアンとの鬼ごっこのような攻防戦が繰り広げられるところが新味だ。
また、スピーニーが演じたヒロインのレインがオリジナルでシガーニー・ウィーバーが演じたリプリーと重なるようなタフな女性であり、『エイリアン2』(86)に見られたアンドロイドとの情愛も描かれるなど、オリジナルを意識した設定やシーンが多々見られるので、ファンは思わずにんまりするところがあるが、初めて『エイリアン』という題材と接した者にとってはこれでも十分に衝撃的かつ魅力的に映ると思う。
また、宇宙ステーション内の6人組対エイリアンという構図は『ライフ』(17)とも似ている。 いや、もともと『ライフ』が『エイリアン』をまねたのだから、この映画はめぐりめぐっての原点回帰ということになるのかな。
ところで、オリジナルでアンドロイド役を演じた故イアン・ホルムが、この映画にも出てきて驚いたが、これは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)のキャリー・フィッシャー同様、亡くなった俳優をAIで再現したものだという。こんなところにもオリジナルからの45年という月日の長さを感じる。
『映画検閲』(9月6日公開)
1980年代、サッチャー政権下のイギリス。「ビデオ・ナスティ」と呼ばれた暴力シーンや性描写を売りにした過激な映画の事前検閲を行うイーニッド(ニアフ・アルガー)は、容赦のない冷徹な審査故に「リトル・ミス・パーフェクト」と呼ばれていた。
ある日、イーニッドがいつも通りに作品をチェックしていると、あるホラー映画の出演者が、幼い頃に行方不明になった妹のニーナに似ていることに気付く。
妹の不可解な失踪といまだに向き合えていないイーニッドは、不気味なホラー映画と、その映画の謎めいた監督の背後にある真実を突き止めることを決意するが、次第に虚構と現実のはざまへと引きずり込まれていく。
長編映画はこれが初監督となるプラノ・ベイリー・ボンドによる心理ホラー。サンダンス映画祭など各国の映画祭で上映されて注目を集めた。
劇中に流れるホラー(ゴア、スプラッター)映画、それを再生するVHSテープとビデオデッキとブラウン管テレビ、あるいはフィルムと映写機、そして闇レンタルビデオ店(ダビングテープ)の存在など、「ホラー映画の過激な描写は青少年の人格形成に有害」と言われた80年代当時の映画(ビデオ)事情の一端を再現している。
また、映画検閲官を描いた映画は珍しいので、その仕事ぶりは興味深く映ったが、虚構と現実の交錯描写が曖昧過ぎて、残念ながら見終わった後にもやもやした感覚が残るのは否めなかった。
そんなこの映画を見ながら、80年代中ごろ、『人喰いエイリアン』(84)や『悪魔のオペ』(74)といった、劇場未公開の低予算ホラーやアクションものを中心にビデオ化した「MIMI」というレーベルがあったことを思い出した。
(田中雄二)