[番外編]子どもに読ませたら泣かれました……
元祖アンパンマンの「これじゃない感」はある意味恐怖!?
最後に、匿名希望の某書店員さんが教えてくれた、これまでの作品とは少し違うテイストの絵本を紹介します。それは子どもが大好きなヒーロー『アンパンマン』です。
とは言っても、ここで紹介するのは元祖『アンパンマン』。みなさんが頭に思い浮かべるあのかわいらしくたくましい姿とはだいぶ違います。
この作品が収録されているのは、復刊ドットコムから出版されている『ふしぎな絵本 十二の真珠』。やなせたかしさんによる十二の短編とさし絵がまとめられた幻の初期作品集です。
この絵本に収録されている元祖アンパンマンは、ひどく太っていて全身焦げ茶色。顔もアンパンというよりは、まるで中年のおじさんのような風貌です。
勧めてくれた書店員さんは、自分のお子さんにこの本を読んであげたときに「こんなのアンパンマンじゃない!」「違うじゃん! こんなの違うじゃん!」と泣かれてしまったそうです……。
確かに、現代のアンパンマンになじみのある子どもたちが見たら、夢を壊されたショックで泣きたくなるであろうビジュアル。しかも物語の最後には、空を飛んでいるアンパンマンが高射砲陣地で撃ち落とされてしまうというまさかの超展開! そもそも「高射砲」と言われてもピンとこないし、夢いっぱいの子どもたちに読ませるには、少しシビアすぎる終わり方かもしれません(笑)。
とは言っても、あのやなせたかし先生の原点である十二編の短編はどれも読み応えのあるものばかり。アンパンマンを見て育った子どもが大人になったときに、「アンパンマンの原点はこの作品なんだよ」と教えてあげれば喜ぶことでしょう!
今回取り上げた怖い絵本は、どれも子どもに読ませるには少し気が引けるものばかりでした。しかし大人になった今読むと、子どもとは違った目線から新たな発見を楽しめるものです。
画家の魂が込められた絵の迫力と、簡潔で美しい言葉が紡ぐ独特の「怖さ」をあなたも感じてみませんか?
今回取材にご協力いただいた書店
■子どもの本の専門店『クレヨンハウス』 東京店
地下鉄「表参道駅」から徒歩5分の場所にある絵本専門店。子ども向け絵本のほか、地下一階にはオーガニックレストランや野菜市場も併設しており、大人と子どもが一緒になって楽しめる空間となっている。
■ブックハウス神保町
本のメッカ、神保町にある唯一の児童書専門店。今回紹介した怖い絵本のほか、子どもに人気の「しかけえほん」や「うごくえほん」のコーナーも充実しており、ゆったりとしたスペースで素敵な本との出逢いを楽しめる。