京極夏彦が描く「容赦のない」の怪談

ここまで紹介した二冊を見て、「いくら怖いとは言っても所詮はこの程度か……」と思っている方もいるのでは? まだまだこれは序の口、ブックハウス神保町の店員さんが推薦してくれた本格ホラー作品『いるの いないの』は、今までの作品をはるかに上回る怖さです。

ストーリーは、おばあさんの住む古い家で暮らすことになった「僕」が、家の暗がりにいる「何か」の気配に四六時中そわそわし続ける、という典型的なホラーの形式なのですが、これが世界妖怪協会の評議員でもある京極夏彦さんの作品とあっては怖くないわけがありません。

ブックハウス神保町の店員さんが「大人でも背筋が寒くなるほど怖い絵本です……」とひと言だけささやき、私にこの本を勧めてきたこともうなずけます。

しかし私が特に恐怖を感じたのは、京極夏彦さんの文章よりも、むしろ町田尚子さんのさし絵です。「この絵本を読んで震えて叫べ!」という著者の気迫が伝わってくるような不気味な絵の数々は、大人でもトイレに行けなくなるほど……。特に最後のページの絵はトラウマ必至です。これを子どもに見せようものなら、最悪の場合、泣き叫ぶと思いますので注意してください。

これだけ言われても読んでみたい、という勇気のある方は、ぜひご自分の目で「いるのか」「いないのか」を確かめてみてください。