2.「歌ってみた」「踊ってみた」動画に関わる著作権の考え方

「インターネット上に動画を送信する行為」は、許諾がなければ「公衆送信権」「送信可能化権」といった権利を侵害する行為となる。それをふまえ、「歌ってみた」「踊ってみた」動画は、法的にどう扱われるのだろうか。

「歌ってみた」「踊ってみた」動画についての法律的見解
個人使用の範囲という捉えられる可能性はあります。じつは、著作権には、例外的に規定されている「私的使用のための制限」が設けられています。

第五款の第三十条には、「個人的に又は家庭内その他これらに準ずる限られた範囲内において使用する」場合には、複製が認められているんですね。ただその先で、問題としては『投稿』という行為が当てはまるかどうかですが、直接、著作権を侵害しているとは言いがたいかもしれません。

ここで関わるのは著作物の財産的価値ですが、例えば、歌っていたり踊っていたりする動画を何らかのメディアに焼くなどして販売する。つまり、利益を得てしまえば法律にふれる可能性はあります。だから、配信サイトでただその動画を配信するというだけならば、それぞれの個人が自宅などでやっているかぎりでは問題にならないと思われます。

動画により広告収入を得る場合は?
広告収入だけで『利益を得ている』と解釈される可能性は、低いかもしれません。極端な例ですが、はなっから『広告収入を得るためにやっています!』と公言していれば法律にふれるかもしれませんが、自分の歌っている姿や踊っている姿を見てもらった中で、自然に広告収入を得ている場合は『利益』と判断するには微妙だと思います。

 

取材協力して頂いた太田真也弁護士。ネットカルチャーにも精通している。

ただ、例えば、「踊ってみた」動画を通して、踊っている本人ではなく、振り付け自体が内容の中心になっている場合には、振り付けのビデオを売っているのと同じだと解釈される可能性はありうると思います。あくまでも、動画に映っている本人が目立っていると解釈されるときは、法律にふれる可能性は低いでしょう。