――宇宙や惑星研究に関しては数多くのものがあると思いますが、なぜ、中でも火星の研究に至ったのですか?
宮本:特に火星が面白いのは地球に一番よく似ているからですね。
僕にとって惑星を研究する一番の目的というのは、なぜ我々が地球に住んでいるのか、我々は一体何者で、地球というのは一体どういうものなのかというのを知りたい、というところなんです。
それを知るうえで、やっぱり火星というのは表層関係の意味では地球と一番よく似ている惑星なので、そこからなぜ生命が地球に誕生したのかという理由を知るために、地球と似ている同じような環境の中、生命がいるのかいないのか、という研究をしていくのがひとつ重要な方針だと思っています。
――火星に生命がいる確率ってあるんでしょうか?
宮本:火星研究をやっている9割の研究者が火星の表面にはいないだろうと考えていると思います。いるとしても、何キロも地下。地下にもいないと考えている人も多いので、火星に生命がいると考えるのは、どちらかというと突飛な考えです。
でも僕らはいるんじゃないかと思っているんですね。それも火星の地下だけでなく、表面でも検出できるんじゃないかと希望をもっていて、そのための検出する機械も検討しています。なんとか日本のロケットで打ち上げて、生命探査できればいいなと進めているところです。
このTeNQで宇宙への興味を持つ人が増えて、火星探査に行こう!とみんなで盛り上げてくれればいいですね。
――お話を聞いていて、宇宙というのは夢を持たせてくれるものだと感じたのですが、宮本准教授が宇宙研究に駆り立てられるものとは何ですか?
宮本准教授:まさしく夢なんですが、いわゆる世間でいう宇宙のイメージ、キラキラとして、ふわっとして瞑想でもしたくなるようなロマンのあるものではなくて、僕が興味があるのは太陽系で、太陽系はもっと泥臭くて現実的なものなんです。
火星なんてローバーが10年くらい火星を走り回って、極めて大量のデータがとれているわけで、現実的な形でわかっている。これは、望遠鏡を覗いて、夜なんとなくロマンだな、と宇宙に思いを馳せるのとはまったく相反するようなことで、泥まみれになって地質調査するような、泥臭い荒々しい現実なんですよね。
そこが僕には面白くて。その現実感があるからこそ、火星と地球はどう違うのかな、その先には、自分がなぜ地球にいるのか、地球というのは何者なのか、なぜ自分がそこにいるのか、というような究極的な問いに迫れるような気がしてとても面白いですね。
――日々現実的に見えていって、逆に言うと火星側から地球が見えてくるようなことも増えてくるのかな、と思ったのですが。
展示の中に、火星から見た地球の写真があります。あれでみると、地球が情けなくなるくらいにちっぽけな、よくある星の一つでしかないというのが明らかになったような気がして。そういうものが具体的に体感できるのが太陽系探査の面白いところで、それを見てしまうと、地球が特別であるとか、人類が特別であるとか、いかに思い上がった考えであるかを感じます。ある意味がっかりすることかもしれないけれど、真実に近づける気がして面白いです。
――最後に「TeNQ」という施設とそれに関わったことについて感想をお聞かせください。
宮本:プロジェクションマッピングとか、シアター宙とか、基本的にはアミューズメントとして来る人に、意図せず本当のサイエンスをぶつけられるというところが、ここは本当にうまくいっていると思います。遊びに来た人たちに本物のサイエンスをぶつけられる。
これだけの人がいれば、中にはもともとそんなことには興味がないし、興味を持つとも思っていなかった人が、「あ、こんな面白いものがあるんだ」と思ってくれたりするんじゃないかと思っているんです。そういったチャンスを与えてもらうのは極めて光栄ですね。
ちなみに、来場者の方のこんな反応もあったのだとか。
宮本:僕はその時いなかったんですが、昨日の夜にきていた来場者の方が、「(リサーチセンターの)中にいるのは東京ドームのバイトだろ」と言っていたらしいです(笑)。
冗談抜きに実際にいるのは最前線の研究者!みなさん、それっぽいアルバイトの人ではありませんよ!
最前線、先端の研究に気軽に触れられる貴重な「TeNQ」のサイエンスエリア。ここで展示に触れることで、自分の中の気付かなかった興味を刺激される人が出てくればいいですね。