【マーケティング考_5】ここ数年で、デジタルカメラの販売数は激減、出荷台数も大幅に落ち込んでいる。コロナ禍後、ミラーレス一眼がデジタルカメラ市場をけん引し、一時的に減少を食い止めた。しかしそれも束の間、ミラーレス一眼の新製品価格が上昇したことをきっかけに、市場に再び暗雲が垂れ込めている。CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)が発表したカメラの出荷台数と内閣府の消費動向調査の普及率それぞれの動きをみていく。○年々減少するデジタルカメラの出荷台数
デジタルカメラ全体の出荷台数
まず、CIPAが毎月発表しているデジタルカメラの出荷台数を基に、年間の出荷台数を算出した。2014年時点では約578万4000台だったが、年々減少。22年には約92万9000台まで落ち込んだ。翌23年は約91万2000台と前年をさらに下回った。
出荷台数減少の大きな要因は、スマートフォンの普及が大きく影響しているのは周知の事実だ。スマートフォンの普及により、SNSを利用する人が増え、撮影をする人は確実に増えている。しかし、デジタルカメラの販売に結び付いていないのは、出荷台数からも明らかだ。
○普及率はどのような推移をたどっているのか
総世帯におけるデジタルカメラの普及率
次に、内閣府の消費動向調査から、総世帯におけるデジタルカメラ普及率の推移をみる。14~16年までは6割台で推移、17年に58.9%と6割を下回った。その後も普及率は減少し続け、22年に5割を割り込み、24年は41.5%まで落ち込んでいる。直近10年で20ポイント以上の減少だ。
一方、スマートフォンの普及率は17年に6割を超えたあと、24年には9割を超え、7年で30ポイントも上昇した。デジタルカメラとスマートフォンの普及率は対照的な推移をたどっている。
○デジタルカメラ離れが一番進んだのは、29歳以下と30代
最後に、世帯主の年代ごとに普及率を比較する。すべての年代で減少しているが、特に顕著なのは若年層だ。29歳以下の普及率は、14年に69.5%だったが、24年には18.2%と50ポイント超減少。30代でも10年ほどで50ポイント弱減少しており、全体の普及率を押し下げる大きな要因となっている。
先にも書いたように、スマートフォンの普及を背景に、撮影人口は確実に増えている。しかし、デジタルカメラを使った、本格的な撮影をしている人たちは減少していることが統計値から明らかだ。
日常のふとした瞬間を記録するのか、非日常の特別な瞬間を記録するのかという違いが、スマートフォンで撮影するのか、デジタルカメラで撮影するのかという違いにつながっているのではないだろうか。(BCN総研・森英二)